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憑依("うつせみ"から改題)
【SF 官能小説】

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君の指は俺の指-1

 ダラダラと惰眠を貪り、起きてからも動画を眺めたりスマホを弄ったりして無為な時間を垂れ流しにするいつも通りの土曜日。お腹が空いたと思ったら、いつの間にか夕方になっていた。
 出かけるのは億劫だが、食欲には勝てない。適当に身仕度してアパートの廊下に出た。
 階段の方へ歩いていくと、ちょうど隣の部屋の女の子が帰ってきた。清純な顔立ち、サラリと流れる黒髪、どこか遠くをみつめるような気怠い瞳。要するに俺のストライクだ。それもド真ん中の剛速球。
 だが、親しくなる機会などそう都合よくやってくるものではない。彼女にとって俺はただのお隣さんに過ぎないのだ。
 軽く会釈をしてすれ違おうとした。その瞬間、柔らかな風が二人の間をフー、っと通り過ぎ、彼女の長い髪が揺れた。シャンプーと汗の匂いが絶妙に溶け合った、胸をジクっとさせる香りが漂ってきて、ああ、こんな子と二人っきりになりたいなあ、と思った。そのとき、彼女の髪の先端が俺の首筋を撫でた。
 視界がグニャリ、っと歪んだ。上下も左右も前後もない空間を漂った一瞬。
 「あはぁあぁ…入ってくる、私の中に入ってくるぅ!」
 という女の喘ぎ声を聞いたような気がする。
 たぶんその時に何かが起こったのだろう。体の感覚ははっきり有るのに、自分の意志ではピクリとも動けないまま、隣の女の子の意志のままに歩かされ、彼女の部屋に入った。しかし、そこにある鏡に俺は写っていなかった。
 「あはあ…。」
 彼女が自分の乳首を愛撫をする度、言いようのないムズムズが俺の胸に走る。爪の先で先端をカリカリ引っ掻かれると、俺の乳首にもジンジンと快感が広がる。
 彼女は突然手を止めると、スカートのホックを外し、ジッパーを下げて乱暴に脱ぎ捨てた。そして、待ちきれないとばかりに急いで鏡の前にしゃがむと、肩が激しく上下するほど息を荒く乱れさせながら大きく足を開いた。
 「ああ…。」
 鏡の中に写っている自分の下着をじっとみつめているうち、中央部分の湿り気がどんどん広がっていく。その原因である潤いにネットリまみれた縦の溝がうっすらと透けてしまうぐらいに。同時に、甘酸っぱいような匂いが、目に見える湯気を発散しているかのような濃厚さで立ち上ってきた。
 眩暈がした。欲情を隠そうともしないその部分、そこが何を求めているのかを雄弁に伝えてくるその匂い。下腹部を鷲掴みされているかのように逃れられない呪縛。
 「ああ、もうガマン出来ない…。」
 焦りにも似た感情に抗いきれず、白く長い指が白くなめらかな太腿を這い、疼きを訴えている部分にツーっと近づいていった。
 やがて指先が下着に触れた。その瞬間、満水のダムが決壊したかのように、溜まりに溜まっていた情欲が怒涛の濁流となって溢れ出し、湿った布の上を指が激しく這い回った。
 「ああ、ああ!あはあぁ…あうっああ…。」
 すると、彼女の指の動きに合わせて俺の下腹部にも快感がジワー、と広がっていった。やはりそうか、間違いない。彼女のカラダが感じたことはそのまま俺も感じるのだ。
 もう、沸き上がってくる悦楽と興奮を抑えきれない。千切るような勢いで下着を剥ぎ取り、曝し出されたその部分を鏡に見せつけるように腰を突き出した。
 そして、少し熱を帯びたようにブヨっとなってしまっているベチョベチョの谷間や突起を、容赦なく弄り回した。
 「ああ、お願い。私のここにこんな事をして!ここを、ここを…。」
 彼女の欲望は純粋だ。動画でよく見かけるようなわざとらしい演技とは違う、本物の恋、本物の切なさ、本物の欲情に突き動かされ、どうすることも出来ずに指を動かし続けている。俺にはそれがはっきりと分かる。なぜなら、それは同時に俺の想いであり、快感であり…つまり二人は、心も体も完全に共有しているのだから。
 「そうよ、そうよ、そうなふうに、私と…ああ、私の指は…私の…。」
 彼女は、腰をくねらせ、指を暴れるに任せた。それは俺の腰であり、指でもある。俺たちは、彼女のカラダを通して、自分自身を愛撫しているのだ。
 そしてついにその時はきた。
 「あうぅっ、はう…うぅー!」
 『ぐうぅー、ぐは…あぅー!』
 絶命のような叫び声を同時に吐き出し、グイ、っと上半身を反らして小刻みに震えた。下腹部から全身にジュワー、っと広がっていった快感の粒子は、炭酸の泡のようにプチプチと弾けて痺れの余韻を残し、俺たちはその間中、情欲の泥沼に沈んでいくかのような、甘美な悦びに包まれていた。
 ようやく少し落ち着いたところで俺は思った。これがオンナの絶頂なのか。なんと深く、長いのだろう。ズルいぞ、オンナたち。オトコなんて一瞬だからな。
 それにしても凄かった。彼女、いつもこんな感じなのかな。こんなに可愛くて、とってもおとなしそうなのに。出来ることならまた体験したいなあ。でも、今日はもう疲れた…。
 俺の気持ちが彼女から少しそれた瞬間、ハダカの背中が目の前に現れた。
 「え?あれれ?」
 思わず声が出た。彼女が振り返った。
 「な、なんですか!なんでそんな所にいるんですか!」
 「ごご、ご免なさい!」
 慌てて部屋を飛び出し、すぐ隣の自分の部屋に駆け込んだ。


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