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調教学園寮夜話
【学園物 官能小説】

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第15話『水没シーソー』-2

「中に入ったら蓋をして、床にある環を首に嵌めて頂戴。 鎖の長さは3メートルしかないから、貴女たち2人なら、2人ともまっすぐ立てそうね。 首輪が窮屈なら、少し屈めば楽になりますよ。 で、2人揃ったところで上から水を注ぐけれど、慌てないでいいわよ。 水位の上昇はゆっくりだから」

 ここまで説明を受けて、【A4番】は装置の用途を理解したようで、フイと視線を落とした。 一方【A1番】はいまいち呑み込みが遅く、真剣に説明を聞いている。

「そのうち水が一杯になったら、当然だけど息が出来なくなりますねぇ。 それじゃ困るから、交互に息継ぎして頑張りなさい。 1人がしゃがめば鎖に余裕が出来るから、もう1人は水面に顔を出せるはずよ。 もっとも、片方が息をしてる間は、どうしたってもう1人が息を止めなくちゃいけないから、自分ばっかり息を吸ってたらどうなるか……大変なことになっちゃうわけ。 一度操作を始めたら誰にも止められないのが欠点で、水責めが終わるまでは、私もここで見てるだけ。 誰かが助けてくれるなんて、甘い考えは捨てましょう」

 ここまで聞いてようやく理解できたのだろう、【A1番】が青くなる。 寮監が2人に求めているのは、水槽の中で窒息の恐怖と潜水の苦痛に悶えながら、懸命に足掻く姿を披露することだ。 それは【A1番】が苦手とする分野だった。 例えば鞭や浣腸のように、我慢に失敗しても直接命に別状がないと分かっていれば、大概の苦痛には耐えられるし、最後まで理性を保って振舞える。 けれど、高いところから小さな的に飛び降りたり、灼熱の鉄板の上で踊らされたりといった、一歩間違えば死につながるシチュエーションでは話が別で、襲いくるパニックにつかまることもしばしばあった。 【A1番】の欠点を見抜いた上で用意したとすれば、今回の調教メニューは正鵠を射ている。

「安心なさい。 いくら厳しく調教っていっても、水責めが永遠に続くわけじゃあないからね。 水位が上の方にある穴に到達したら、サイフォンの原理でガラス槽の水が全部抜けるの。 だから、苦しいのも怖いのも、全部それまでの辛抱よ。 大切なのは『2人で息を譲り合うチームワーク』。 最後まで2人とも気絶しないでチームワークを頑張れるかどうか……」

 ギィ……。 寮監がガラス箱の扉をあけると、ガラスには似つかわしくない金属質な軋みが響いた。

「さて。 覚悟のほど、見せてもらいましょう」

「……失礼致しますわ」

「よ、よろしくお願いします」

 シュルリ、2人とも手際よく全裸になると、抵抗することなく自ら箱に納まった。 

 ジョロロロロ……ジャジャッ……ジャアー……。

 首輪の装着と同時に天井から水が注がれる。 あっという間に踝(くるぶし)まで水に浸かった。 2人とも今のところは取り乱す様子をみせず、【A4番】は深呼吸しながら、【A1番】は歯を喰いしばって流れる水に打たれている。 これから自分たちがどうなるかは、事ここに至れば、2人とも完璧にイメージ出来ていることだろう。 1人が水に潜り、もう1人は水面で立ち泳ぎしながら呼吸する。 水位が上がればあがるほど鎖に余裕がなくなるため、潜る側は少しでも相手に鎖を長く送るため、首輪と鉄環がひっつくくらい深く潜らなくてはいけない。 ということは、水位が増せば増すほどに、潜る側の息が限界に達してから水面に出るまでの時間が長くなる。 苦しさが増すのは後半だ。 その後半を凌ぎ、最後まで互いに呼吸を譲り合うことではじめて、寮監が求める調教になる。

 もしも。 息継ぎする側が長い事呼吸し、潜る側が耐えきれずに浮上すれば、息継ぎしている途中で水中に引きずり込まれることになる。 ただでさえお互い苦しいなかで少しでも自分を優先すれば、結果的に2人ともが鎖を自分に引っ張り合い、どちらも鎖が水面に届かず、2人して窒息すのは目に見えている。 寮監が告げた『チームワーク』という表現は言い当て妙で、相手が自分の状況を察し、適宜息継ぎを止めて潜ってくれると信頼できなければ、成立しない調教といえる。 

 ジャアー……ジョボボボボ……。

 既に水位は腰を上回り、お臍、胸へと増してゆく。 【A1番】がカチカチと歯の音が合わない理由は、恐怖はもちろん、冷たい水のせいで純粋に体温が奪われつつあるからだ。 一見泰然としている【A4番】にしても唇の色は真紫で、水の冷たさがうかがえる。 【A4番】は何度かガラス越しに隣の様子を伺うも、【A1番】は迫る水面を見つめており、そんな隣に気づかなかった。 普段は周囲への気遣いを欠かさない【A1番】だけに、この状況が余程のプレッシャーなことは明らかだ。 

 スウ……ッ。

 大きく胸を膨らませる【A4番】。 身長的にいえば、先に水面に没するのは【A1番】になるのだが、

 ポシャン。

 敢えて先に水に潜る。 しかも隣が息継ぎする分だけ最低限潜るのではなく、床に顔がつくまでめいいっぱいだ。 後半息が苦しい状況に慣れる意味もあるし、毎回全力で潜るなら相手の顔が水面上にあるかどうかいちいち気にする必要もない。 もしも最小の労力でクリアすることを考えるなら、常に相手が息継ぎできる分だけ水に潜ればいいのだが、そうするには常に冷静な判断力が求められる。 自分は水泳が得意で水は怖くないし、最後まで理性を保つ自信はあるけれど、相手がそうとは限らない。 2人揃って合格するため【A4番】なりに考えた結論だ。

 ぼこぼこぼこ……。

 鼻を摘まんで潜る【A4番】の隣では、貰った余裕を生かし、立ち泳ぎしながら口で息をする【A1番】。 あとは【A1番】が覚悟を決めてガラス底へ潜れるかどうか――相手を信頼しきれるかどうか――。

 ガラスの向こう側。
 寮監はソファに深々と腰を下ろし、そんな2人を眺めていた。


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