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「淫らにひらく時」
【若奥さん 官能小説】

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「淫らにひらく時」-7

「最近描いたのって、あまりいいのがないのですがこんな感じです。」

森の木立、公園の池、それにどこか港の風景。
白黒で色がついてはいないのだけど、一番見せたい物の線がくっきりと力強くて分かりやすいのと、白黒ならではの濃淡が色のない絵に見せなかった。
面白いのは動く絵があった。
山間の風景画なのだけど、線というか絵が全体に間延びして見える。
鈍行列車に乗り込んで、動く風景を描いたものだそうだ。これはやはり才能だろう。

人物画は石段に座って見上げる少女。新聞を読む老人。
目を惹いたのは中年夫婦のヌード画だった。
太って肌の弛んだオバサンが裸で半身を起こしている。その後ろで痩せた男が背中を向けて身を丸め、横たわっていた。
セックスの後だろうか、それとも夏の日常的な昼下がりなのだろうか。
乳首の質感、陰毛の描写。弛みきった肌。エロチックだった。

「これ、いいわね。」

「お気に召しましたか?僕も結構好きです。」

「モデルは?」

「あぁそりゃ・・・ちょっと言えません。」

秘密めいたものがあるのだろうか、それとも説明が面倒なのか・・・
私だって、自分の素性を説明するのはできなくはないけど面倒だ。
セックス目的で男を探しているというのも、一言で言ってしまえばそれまでなんだけど説明は面倒な話になる。

「もっとこんなのないの?」

「裸婦ですか?なくはないけど・・・見ますか?」

女の裸をいろいろ見せてもらった。
写真のようにリアルで写真よりも現実感を感じられるのは、やはり人が描いた思いのようなものだろう。
数本のイーゼルと呼ばれる巨大な写真立てみたいなのに二枚ずつ立てて、真っすぐ下だけを照らす電灯の下に翳した。
誘うような女。ただ、虚ろに立つ女。裸で歩く女。
頭の中が何かでいっぱいになってくるような感覚を覚える。
そうして、また母の記憶とシンクロした。
記憶の中の母は白いくたびれたスリップ姿だったように思う。
異様に思えたのはそこから黒い乳首が透けていたからのように思う。
私はたぶん、母の乳首を吸うほどの年齢でそれが目についたようだけど、そんな記憶もすでに定かでない。
長い年月のうちに私と一緒に成長して、脚色も加えられているのだと思う。
そもそも、その記憶自体が現実の事だったのかどうかさえ、あやふやなのだ。

裸の女で心をつかんだのが一枚あった。
女は上半身だけで前に掲げた手首をなぜか縛られている。
その腕で胸が隠れていて、何かを訴えかけるような。それでいて心の中では諦めているような表情をしていた。


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