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特命捜査対策室長 上原若菜
【レイプ 官能小説】

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過去からの足音-6

若菜に触れ、マギーにもその悲しみが伝わった。瞳から涙が溢れた。まるで若菜の経験した場面をマギーも体験したかのように思えた。哀しみが辛かった。

「後輩に守られちゃったわね…。」
落ち着いた若菜がようやく顔を上げた。
「そ、そんなつもりじゃ…」
大それた事だと思い慌てて否定する。
「ありがとう。」
「えっ…?」
若菜がそんな素直に自分に感謝を表す言葉を言った事に驚いた。若菜は照れ臭そうな表情をして立ち上がる。
「まさかマギーに泣き顔を見られるとはね…。フフフ。誰にも言わないでよ??」
「い、言いませんよ…。」
マギーは涙を拭いて立ち上がった。

すると若菜は突き当たりの壁の方を見て銃を構えるポーズを取った。
「ここから田口を撃ったのよ。こうしてね…。バーン、て。」
銃口を向けたであろう方向を見ると、やはり壁がどす黒くシミになっていた。
「あの時の気分は、ただの殺人者だった。清々しくも何ともない。憎い奴をこの手で殺したと言う達成感しかなかった。あと若干の哀しみ、かな。もう残りの人生なんていらないと思った。でも私は今、警察官として生きている。色んな人の助けがあって、ね。」
「…」
「マギーもそう。人の助けはありがたいし、助けてもらう事は決して恥じゃないのよ?頼るべき時は頼る、助けて欲しい時は助けてもらう、これが人生で一番大切な事。私はそう思う。」
「はい…。」
「それと、今、私は何を考えてるか分かる?」
「いえ…。」
若菜は2、3歩前に歩き、そして振り向いて言った。
「私は海老川優里を助けたいの。」
「えっ…?」
意外な言葉にマギーは驚いた。
「彼女だってレイプで人生をおかしくされてしまった被害者なのよ。レイプを憎む気持ちは私も同じ。やり方が違うだけであって佐川健吾に罰を与えたい気持ちは一緒なのよ。私はレイプによって失われてしまった本当の海老川優里を彼女に取り戻して上げたいの。私は確信してる。私は海老川優里といい友達になれるって。私は絶対に海老川優里を助ける。色んな事が起きたこの場所でその気持ちをはっきりさせたかったの。」
「…」
若菜がそのような事を考えていたとは思わなかった。事件解決のその先を見ていたのだ。上原若菜と言う女性の偉大さを改めて感じたのであった。


小屋の入口から若菜らには届かない、小さな声が聞こえた。
「私もあなたと友達になれそうな気がするわ…。奴を殺したら、ね…。でも…。」
と。
その声の主は足音も立てずに森の中に消えて行ったのであった。


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