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デザートは甘いリンゴで
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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9.接近-2

 その次の週から、予備校の勤務が空く水曜日の夜、誠也は増岡家にやって来て、食事を家族と一緒にとった後真琴の家庭教師として二時間程度の勉強の時間を持つようになった。
 美穂は誠也が訪ねてくる水曜日の夕食には必ずリンゴを食卓に載せた。ダイニングテーブルでは、英明は娘の真琴の横に座らなければ気が済まない父親に成り下がっていたので、自ずとその向かいには美穂と誠也が並んで位置することになった。そのせいで美穂も誠也も落ち着いた気分で夕食を楽しむ状況になれなかった。密かに愛し合い、お互いの身体を重ね合い、求め合う関係の二人は、そのことを前にいる英明やその娘に悟られはしないかといつも気が気ではなかったのだ。
 そんなことなど知る由もなく、真琴は誠也にますますなついてしまっていた。小さい頃から正月ぐらいしか顔を合わせたことがなかったくせに、いとこの彼のことを『誠也にいちゃん』と呼び、慕っていた。そして勉強中はその身体をべったりくっつけ合って嬉々として机に向かっていた。
 勉強の合間に真琴の部屋を訪ね、ジュースとコーヒーと「うさぎりんご」の乗ったトレイを持って入る美穂は、そんな二人の様子を見て軽い嫉妬を覚えるのだった。そしてその度に誠也は困ったような顔で美穂を見て苦笑いをした。



 明くる年、真琴は中学二年生に進級し、英明は勤め先の学校で四月から教頭に昇格していた。
 教頭という役職は学校の中でも最も自己犠牲を強いられる立場で、朝一番に出勤し、夜は陽のある内に帰ることなど到底できなかった。彼は愛する娘、真琴と仲良く並んで食事をすることができるのは土日だけとなってしまって、そのことを一番気に病んでいた。

 十月になり、『シンチョコ』の前庭に立つ背の高いプラタナスの葉も色づき、時折冷たい風に煽られて数枚宙に舞った。
 「こんにちはー」
 弾けたような声がホールの中に響いた。
 店内のレジの横にいたマユミの娘真雪が振り向いた。
 「あ、マコちゃん」
 「真雪お姉ちゃん、こんにちは」
 真琴はにこにこしながらぺこりと頭を下げた。
 「どうしたの? お買い物?」
 この店のトレードマークであるカフェオレ色の前掛けをつけた真雪は入り口に入ってすぐの所に立ったままの真琴に駆け寄った。
 シンプソン家のマユミとケネスの間に生まれた双子の兄妹の内、健太郎は店を継ぐべくお菓子作りの専門学校へ、妹の真雪は動物飼育の専門学校に通い始めていた。
 「真雪お姉ちゃん、専門学校は?」
 「今日は午後から休講なの」
 「お店手伝ってるんだ、えらいね」
 「パパがうるさくてね」真雪は笑った。「で、今日は?」
 「この店にさ、リンゴ味のチョコレートって売ってる?」
 真琴がバッグから派手にデコられた元は白かったと思われる財布を取り出した。
 「リンゴ味? どうして?」
 「誠也にいちゃんの誕プレに買ってあげるの」
 「ああ、マコちゃんの家庭教師のいとこのお兄ちゃんね? 十月生まれなんだね」
 「そう。誠也にいちゃんってリンゴマニアなんだ」
 真雪は思わず笑った。「なに、マニアって」
 「だってそうだもん。いっつも勉強の途中でリンゴのことを熱く語り始めるんだよ。それにいつもお母さんにリンゴを持ってこさせるの、休憩時間に」
 「好きなんだね、リンゴが」
 「だから嫌味ったらしくリンゴ味のチョコでも買ってやろうかと思ってさ」
 その時、店の奥から臙脂のネクタイを締めてカーキ色のジャケットを羽織りながら健太郎が姿を見せた。
 「あ、ケンお兄ちゃん!」
 「お、真琴じゃないか。どうした? 学校帰りか?」
 「そう。どうしたの? お兄ちゃん、お出かけ?」
 「ま、まあな」
 「デートなんだー」
 真琴ははしゃぎながら言った。
 「な、なんでわかる?」健太郎は赤くなって少し焦ったように訊いた。
 「だって。ケンお兄ちゃん、普段ネクタイなんかしないじゃん。男の人って単純だからすぐ解るよ」
 「悪かったな、単純で」
 健太郎はむっとしたように言ってエントランスのドアを開けた。
 「楽しんでねー」
 健太郎は一度振り向くと困ったように口をゆがめ、すぐに店を出て行った。


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