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デザートは甘いリンゴで
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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5.結婚式-1

 十一月。秋も深まり、しばらく下界の慌ただしさに翻弄されていた美穂が朝から見上げた時の青空は、いつの間にか透明度を増し、遙かに高くなっていた。
 その日の午後1時から始まった結婚披露宴は、親戚、招待客含めて30人ほどだった。英明も美穂もあまり派手な式を望まなかったからだ。美穂の両親や英明の親族もそれは納得してくれていた。
 こぢんまりとした会場で和やかな雰囲気の中、披露宴は進んだ。
 ピンク色のワンピースを着たマユミが高砂にやってきてウェディングドレス姿の美穂の前に立った。
 「おめでとう、美穂。ようやくゴールインだね」
 「ありがとうマユミ」
 「高校の仲間の中では最後から二番目だね」
 「そうね、みんな思ったより早くくっついちゃったね」
 「残るはユカリだけ」
 「あの子、なんか結婚しそうにないよね」
 マユミはウィンクをして小声で言った。
 「実はつき合ってる人、いるんだよ、ユカリ」
 「ほんとに? 知らなかった」
 「こないだお店に二人で来てたもん。もうすっごく仲良し」
 「二次会に来るんだよね? ユカリ」
 「うん、この後あたしが迎えに行くことになってる」
 「からかってやろうよ、二人で」
 マユミは笑った。「そうね」
 その時美穂の横に英明が立った。「マユミさん、今日はありがとう。忙しいのにすみません」
 「増岡先生、美穂をよろしくお願いします。こんな子ですけど」
 英明は思わず笑って言った。「どんな子でしたっけ?」
 美穂は顔を英明に向けて口を尖らせた。「今から解るでしょ」
 マユミは口を押さえて笑った。

 披露宴が終わり、ホールの入り口に立って招待客を送り出した英明と美穂は、控え室で着替えを済ませコーヒーを飲んでいた。
 「二次会大丈夫? あなた結構飲まされてたけど」
 「大丈夫だよ。自制する」
 英明は顔を赤くして親指を立てた。
 「ところで」美穂は躊躇いがちに口を開いた。「亡くなったお姉さんの息子さん、招待客の中に入ってなかったけど、良かったの?」
 「ああ、あいつは二次会から参加するって言ってたよ。嫁が厳しくてなかなか自由にできないらしい」
 「結婚してるの?」
 英明は肩をすくめた。「披露宴に出るとなったら夫婦で参加が当たり前だろ? でも他の親戚たちと顔を合わせたがらないんだよ、奥さんの方が」
 「そう、大変なんだね……」
 「僕たちにも扱いにくい嫁なんだ」
 「ご親族で二次会に来られるのはその甥御さんだけなんだね」
 「うん。僕が呼んだんだよ。たまには飲んで羽を伸ばしたいだろうし。それにあいつ明るくて昔から場を盛り上げるムードメーカーなんだ。君もきっとすぐに打ち解けて楽しめるよ」



 二次会は『らっきょう』という居酒屋だった。その奥にちょっとした少人数用の個室があって、二つのテーブルにお通しと箸が全部で11人分並べられていた。
 英明と美穂は壁を背にした席に並んで座った。この二次会に参加するのは英明の学校の同僚4人、美穂の高校時代の同級生マユミとユカリ、短大時代の友人二人、そして英明の例の甥。

 英明の同僚と美穂の短大時代の友人が席についたところでその会は始まった。
 英明の横に座った同僚の乾杯、というかけ声と共に皆がグラスやジョッキを合わせ、すぐに賑やかに盛り上がった。すでに参加者には昼間の披露宴で少なからずアルコールが入っているだけに、賑やかな宴会モードに入るのにはいくらも時間はかからなかった。
 それから間もなくマユミがユカリを連れてやってきた。
 「ごめんなさい、遅くなっちゃって」
 マユミが申し訳なさそうに言って美穂の隣に座った。その横にジャージ姿のユカリが座った。
 美穂が言った。「あんたなんでジャージ? ユカリ」
 「今までジムにいたんだ」
 マユミがおしぼりで手を拭きながら横目でユカリを軽く睨んだ。
 「二次会とは言え、少しはよそ行きの格好で来るもんでしょ?」
 「あたしにとってはこれがよそ行きだもん」
 「何言ってるの。高校時代からちっとも変わってないね、あんたは」美穂は遠慮なく呆れ顔をした。「飲み物は?」
 「ああ、入る時に頼んできた」
 「抜け目ないね」

 美穂の隣に座った英明が時計を見て言った。「遅いな……ちゃんと6時からって伝えたのに」
 「甥御さん?」
 「うん、」英明がとっさに顔を上げた。「あ、来たみたいだな、誠也」

 誠也? 美穂の身体の中で何かが弾けたような音がした。


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