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デザートは甘いリンゴで
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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4.出会い-4

 「あたしが持つよ」
 テーブルに置かれた伝票を手にとって美穂は立ち上がった。誠也はありがとうございます、とあっさり言った。その素直すぎる反応に美穂が拍子抜けした顔をすると、誠也は続けて言った。
 「また美穂さんと食事ができる理由ができた。今度は俺が奢ります」そしておなじみのはじけるような笑顔を美穂に向けた。「美穂さんって素敵な人ですね」

 レストランを出た後、誠也と別れた美穂は『シンチョコ』に立ち寄った。
 「あれ、美穂。どうしたの?」
 マユミがすぐにその姿を認めて出迎えた。
 「ちょっと通りかかったから寄ってみたんだよ」
 「そう。この後用事がないんだったらゆっくりしていって」
 喫茶スペースのテーブルに一人、美穂はほおづえをついて店の前に立つカカオの木をかたどった街灯をぼんやりと見ていた。
 「コーヒー飲む?」
 マユミが三粒のチョコレートが載せられた小さな白い皿を持ってやって来た。
 「さっき食事で飲んだから紅茶にしようかな」
 「そう。どんなのがいい? いろいろあるけど」
 美穂はマユミの顔を見上げて少し躊躇いがちに言った。「アップルティとかある?」
 「あるよ。珍しいね、美穂、フレーバーティなんて今まであんまり頼んだことないのに」
 マユミは笑いながらそこを離れた。

 美穂と向かい合って座ったマユミは自分の手元に置いたカップを手に取った。
 「たまにはいいね、こんなお茶も」
 そう言いながらマユミはまろやかで甘いリンゴの香りのする紅茶をすすった。
 「今日は何してたの? 昼間は仕事だったんでしょ? いつものスーパーで」
 美穂はカップをソーサーに戻した。
 「うん」
 「どう? もう慣れた?」
 「もう一か月以上経ったけどね……でもやっぱりなかなか慣れないとこもある」
 「前の仕事とは違うからね、随分」
 「そうなんだよ」
 美穂は困ったような顔をした。
 「あんたのその性格だったら接客の方が向いてると思うけどね、人当たりがいいから」
 「そうでしょ? マユミもそう思うよね?」
 「スーパーではどんな仕事してるの?」
 「商品の陳列とか整理とかばっかりやらされてるよ」
 「レジ打ちとかは?」
 「まだちゃんと教えてもらってないけど、来月あたりからやらせてもらえるかも。でもみんな何でもやんなきゃいけない職場だからね。人手が足りない所にいかされる。仕事内容を選べるような所じゃないよ」
 「十一月の結婚式まで続けるの?」
 「うん。そのつもり。親と同居してるとは言え、仕事もしないでのんきに過ごすわけにもいかないしね。とは言っても給料なんて小遣い程度の額だけど」
 美穂は笑いながらカップを口に運んだ。

 「あ、そうそう、アップルティと言えば、」マユミがカップをテーブルに戻して不意に顔を上げた。「珍しいお酒が入ったんだよ」
 「お酒? ここはチョコレート屋でしょ?」
 「ちょっと待ってて、見せてあげる」
 マユミはそう言って席を立ち、夫ケネスが仕事をしている売り場奥のアトリエに入っていって、すぐに一本のくすんだ緑色をした瓶を持って戻ってきた。
 「これ」
 テーブルに置かれたその瓶は、丸いリンゴのような形で、琥珀色の液体の中にリンゴが丸ごと漬け込まれている。
 「わあ、すごい!」美穂はその瓶に目を近づけて驚嘆の声を上げた。「リンゴの形の瓶の中にリンゴが入ってる!」
 「『カルヴァドス』っていうフランスのリンゴブランデーなんだって」
 「リンゴのブランデー?」
 「そう」
 「で、でもどうやってこのリンゴ、瓶の中に入れたんだろう。丸ごと入ってる……」
 「リンゴの木の枝にその瓶を吊して、中で実らせるんだって」
 「へえ! 瓶の中でリンゴを育てるんだ……」
 目を丸くしながら美穂はそれを手に取った。ずっしりと重かった。
 「そのお酒を使った生チョコをケニーが開発中なんだよ」
 「ああ、それで」美穂は笑った。「納得。リンゴ風味の大人のチョコレートってわけね」
 テーブルにそれを戻し、改めて眺め直していた美穂は、瓶の中の狭苦しい空間に浮かぶリンゴの実を何となく憐れに感じ始めた。開放的な外界の空気に触れることなく、瓶の中に閉じ込められているそのリンゴを。
 「閉じ込められたリンゴ……なんか、ちょっと可哀想……」


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