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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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復帰、そして新たなる波紋-8

日も沈みだし、公園で遊んでた子達も無邪気に走って帰り出し、すっかり静かな公園となり出して。

「いやー買った買ったぁー、これなら品質も良いし、それに安いありがとな!」
「…佐伯、君。」
「んー、何だー。」

上機嫌に袋を持ち上げる彼、それとは対照的に疑いの目で彼を見つめる私。

「たまたま近くを通ったって本当?」
「え、そうだけど…。」

怪しい。

「お使い頼まれたのも事実?」
「……そうだよ、何だよ疑ってるのか!?俺が嘘ついてるってのか!?」
「だってそうじゃない!私の家と貴方の家って結構離れてるし、たまたま近くを通ったって事は他に用事があったって事でしょ!?なのにほとんど手ぶらだし。」
「……。」

楽しそうな顔が急に険しい顔に。

「お使いだって。」
「俺が自分から勝って出たんだ!手伝おうって。」
「ならどうしてこんなざっくばらんとした。」
「いや、新しい母さんは。」
「家事が苦手だって?そんな訳ないでしょ!もし仮にそうだとしても新しい夫にその息子の為に必死に覚えようとする筈でしょ。」
「そんなのお前の勝手な推測だろ!」
「お使いを買って出たのは信じる、でもその後は全部嘘でしょ!私に会いたいからたまたま近くを通ったとか言って、ざっくばらんとした買い物メモだって、私と一緒にまた買い物する口実に。」
「………。」
「そうでしょ、佐伯君っ!?」

徐々に高まっていくモヤモヤとした感情を一気に彼にぶつける。

「……はぁー、女ってのはどうしてこうも嘘に過剰に反応するかねー。」
「っ!それじゃー本当に。」
「…ごめん。」
「……どうして?何でそこまでして。」
「何だよ、あそこまで見抜いておいてそこはわかんねーってのかよ。」
「えっ。」

彼が真剣な眼差しで私を見つめる。

「……まさか。」
「人生ってのは本当分からないよな、早乙女先輩にフラれて。」
「こっち(北海道)に戻って来たのも。」
「いや、そこまでは、本当はもう先輩にフラれた時諦めてたんだが、そんな時親父から電話があって、一緒に暮らさないかって誘われて。」
「………。」
「これはもう神様が俺に。」
「やめてっ!!」
「っ!」
「……佐伯君、分かってる?自分が今しようとしてる事が。」
「あぁ勿論分かってるさ、お前と風馬が付き合ってる事も、そしてお互いどれだけ大事にしあってるのかも。」

…この人は、誰?

まるで悪魔のように身勝手で、私の事を、そして親友だと言ってくれた風馬君に対して。

「怖がらせたのならすまない!…分かってる、自分でもとんでもなく身勝手だって。」
「……。」
「でも!無理なんだ、お前を再びこの場所で見ると、あの日俺を救ってくれた事、一緒に色んな所に行った事、今は亡くなってしまったお爺さんと皆で正月旅行に行った事、親父がバカだった頃、俺の代わりに怒ってくれた事、家が暗くて汚くてそれに見るに見かねて掃除してくれて、そしてさっきみたいに一緒に買い物に行ってくれた事、それらが忘れたくても頭から離れられなくて。」
「っ!」
「?」

じっと動かずにただ突っ立ってる怪しい人影が、あれは。

「でも、そんな事言ったって私はぁ!」
「兎に角言いたい、いや伝えたい事は伝えた、俺は諦めないから。」
「ちょっ!」

そう言うと彼は言いたい事だけ言ってこの場を走り去った。

「嘘だろ、佐伯君…若葉ちゃんの事、本気で。」

こんな、事って。

次回、64話に続く。


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