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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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開花-1

昨日まで当たり前のように隣に居て、当たり前のように微笑んでくれた父。

私が小さい頃、母は私と父を置いて勝手に家を出て行った、そのせいで今までの暮らしが一変した。仕事一筋で家事は全て母に任せっきりだった父は当然家事何か一切出来ず。掃除はあまりしない買い物も可笑しな物ばかり籠に入れ、食事もちゃんとしたものでなく、ほとんど外食で済ませる事も。

それでも父は頑張っていた、夜遅くに帰って来て早々今度は家の事に勤しみ、自分だってとても疲れている筈なのに辛い顔一つ見せず、いつも笑顔を絶やさずにいて。

そんな彼を支えようと私も親子二人三脚で頑張ってやっていた…、いつか大人になってお父さんをラクにさせてあげよう、そう思って今まで頑張って来たのに。

夢なら早く覚めて欲しい、けど目の前には無情にも眼鏡にスーツ姿の父の姿が。

「話が違うだろうがぁ!」
「でも、お義父さん…。」

重苦しい空気の葬儀場で響く一人の高齢男性の罵声。

「もしあの子のお父さんの身に何かあったら私達が面倒見ますって、アンタらそう言った筈だろうにっ!」

振り向くとそこには父の姉夫婦と、北海道のお爺ちゃんだ。

「そうですけどこっちも後で色々あって。」
「今こっちは大変なんです、それなのに実の子でもない子の面倒何て。」

大人の無慈悲で身勝手な言葉に傷つく。

「言葉を慎め!一番辛いのは彼女なんだぞ!」
「す、すみません…でも、あの子を引き取る事は、本当に。」

聞けば聞くほど自分自身が大人のお荷物に感じてくる。

「なら、あの子はどうするんじゃ!?母親も小さい頃に二人を捨て何処かへ行ってしまわれたし。」
「そ、それは…。」

北海道のお爺ちゃんが延々と夫婦に詰め寄り、夫婦もタジタジで。

「施設に預けよう何て言うまいな!」
「ま、まぁーそれも視野に入れ、今度ゆっくり考えてですね…。」

これじゃ本当に邪魔者扱いだ、今後ゆっくりって嘘よね、それに施設何て。

本来何処にでも母親が身勝手にも家を出ていき、男手一つで私を育ててくれた父もまさかの交通事故、葬儀出れば皆して私をお荷物のような言い草。

きっとこの分だと誰も私を引き取ってくれない、施設何て嫌だしあるのかな。

そう考えると全身に血の気が引いてきた。

親戚は皆私を嫌がり、施設何てひょっとしたらないかもしれない、じゃー私は。

大袈裟で馬鹿に見えるが、ホームレスとなった自分の姿を頭に浮かべてしまい。

そんなの、生きてるとは言えない、死んでいるものと変わらない。

嫌だ、嫌だよ…そんなの。

どうして、どうして私がこんな目に?

ただ普通に誰に指を指されるでもなく普通に生きて来ただけなのに、どうして!?

私はただひたすら神を恨み妬んだ…

神様の馬鹿、白状者!私が一体何をしたと言うの!

床にひたすら視線を下し、そう文句を心の中で吐き続けていると、先程の北海道のお爺ちゃんが私の元へ近づいてきて。

「……。」
「若葉、ちゃん。」

今にも死にそうな泣き顔な私をじっと見つめ、彼は私にそっと手を差し伸べ言う。


うちに、来んか?


仏のように優しい顔で私にそう微笑む、私はその手を無意識に受け入れ、彼の皺だらけの手に触れた瞬間、何だか全てが救われた、そんな気がした。


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