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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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車両の前哨戦-1

【車両の前哨戦】

ズンッ!重い響きが車内に響いた。

その両腕のギブス姿に油断していた雄一は、浅見の意表を突いた予想外の動きに対応が遅れてしまった。普段ならかわせるはずのその一撃を、交差させた両腕で受け止めてしまった。それでも軽く受け流して勢いを殺すつもりだったが、予想を越えた重い攻撃を吸収しきれずに、雄一の腕に衝撃が走った。

「くっ…」

苦悶に歪む雄一の顔の横から、同じくギブスで巻かれた浅見の左腕が襲いかかってきた。雄一は上体を捻ってそれをかわすと、その勢いを利用しながら脚を蹴り出した。雄一の長い脚が浅見の横腹を捉え、バシッと乾いた音が響いた。

(ちっ、浅い!)

浅見の身体に触れる直前、伸ばした脚に気を込めたが、如何せん体勢が悪かった。

「ぐうっ…」

くぐもった声を漏らした浅見の巨体は離れたが、残心を伴わない蹴りでは、大きなダメージを与えるには至らなかった。

それでも牽制にはなったようで、浅見は体勢を崩した雄一に襲いかかることを一瞬躊躇した。その隙を幸いに、雄一は間合いを外して不安定な体勢を立て直した。

「イチチ…、変わったギブスだな、タコ部屋で買ったのか?」

雄一は茶化すことでダメージを誤魔化しつつ、痺れる腕をプラプラと振ってみた。

「くっ…」

その瞬間、両腕にズキンと痛みが走った。予想以上の痛みを誤魔化しきれずに、雄一の表情が歪んだ。

(イチチ、骨いったな…)

特に利き手の右腕のダメージが大きかった。過去にも幾度か骨を痛めたことがあったが、その時と同じ痛みを雄一は右腕に感じていた。

(なに油断してんだよ)

雄一は自分を罵った。この油断する癖は、雄一の大胆さと気のよさが招く昔からの短所だった。気のよい雄一は、相手からの不意打ちを想定しない傾向にあった。何度も痛い目に会いながらも、臨機応変に対応できる強さを持っていることと、若さ故の大胆さもあって、中々その短所が改められることはなかった。

(また陽子さんにネチネチと責められるな)

優子が拉致された時にも油断して、浅見の組の幹部にアイスピックを突きつけられたことがあった。

『相手を油断させるために、わざとだよ…』

後でそれを知った陽子にはそう言って誤魔化したが、その時の状況を分析した陽子には通用しなかった。

『その状況で相手を油断させる必要性は皆無ね。ホント、子供の頃から全っ然成長ないんだから!中学の時もそうだったじゃない』

陽子は過去のことまで持ち出してクドクドと説教を繰り返した。その時のことを思い返した雄一は、身震いをして反省をした。

(汚名返上しないと、マジやばいぞ)

今更だったがようやく気を引き締めた雄一は、対峙する相手の観察を始めた。

まともにやり合えば、浅見のプロレスラー並の怪力は厄介だ。それに相手の骨折も弱点にならないことは、身をもって理解した。それどころか特殊な重いギブスが浅見の破壊力を飛躍的に高めていた。

(近づくと厄介だな。しかし…)

雄一はさっきの浅見の攻撃を思い返した。直ぐに気づいたことは、連続で繰り出される攻撃には見られない躊躇が、その攻撃の初動では僅かに感じ取れたことだ。

身体に故障がある場合、人は無意識にそこを庇う傾向がある。幾ら武骨で単細胞だといっても、それは浅見も例外ではない。雄一はその浅見の無意識の躊躇を、自分の優位として考えることにした。

(なんにしても、先ずは自分のペースを取り戻すことだな)

そのプラス思考が雄一の強張った表情を少し弛ませた。

「がはは。おいおい無理するな。腕折れたんだろ。このギブス貸してやろうか?」

雄一の様子に満足した浅見が小バカにしたように笑った。しかし、自分のペースを取り戻しつつある雄一に動揺はなく、その挑発にも乗らなかった。

「遠慮しとくよ。その重いギブスは、頭脳派のオレには似合いそうにない。頭脳派ではない浅見くんが使ってくれたまえ」

雄一は人指し指で自分の頭をトントンと軽く叩いて、浅見に挑発をやり返した。


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