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二人の外道2
【鬼畜 官能小説】

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A:3-1

 部屋、というよりは牢屋だった。全面がうちっぱなしのコンクリート壁、床も前後左右の壁も、単色の灰色に囲まれている。ただその中に黒い鉄製の重い扉ともう一つ、折りたたみ式の浴室扉が天井のLEDライトの光を受けて浮き出ていた。
 簡素な鉄製ベッドと、むき出しの洋便器、洗面台、小さな冷蔵庫と横幅30cm程度のスチールラックがそれぞれ壁にぴったりと固定されて備え付けられていた。
 ベッドと便器、洗面台は汚れこそ目立たないものの、所どころペンキが剥げていて、使用感があった。一方、冷蔵庫とスチールラックは新しいようで、ピカピカだ。ラックには一段目から赤十字のマークが入った薬箱、二段目に何枚ものバスタオルとバスローブ、真っ白な下着も見える。最終段とその上には飲料水のペットボトルと栄養調整食品の小箱が何箱も積まれている。
 美衣奈は倦怠感を堪えて立ち上がると、まず冷蔵庫を開けてみた。中には500mlペットボトルの飲料水が目いっぱい詰め込まれていた。とりあえずボトルを開けて一口、二口と水を飲む。
「ふざけやがって、くそぉっ」
 今思えば迂闊だった。Aはやたらに笑顔を振りまいていた。笑顔には気を付けろと彼氏は言っていた。一緒に薬を売って、薬をキメて、愛し合った。心配しているだろうか? きっとしているだろう。薬の売人だ、当然警察にも頼れないからなおのことだ。さっさとここから脱出しなければ。
 続いて浴室扉を開くと思った通り、それはシャワールームだった。洗面器にボディタオル、プラスチックコップに歯ブラシ、歯磨き粉。ボディソープにシャンプー、リンス。この牢屋には生きるために必要なものが一通り揃っていた。
(私を飼うつもりか……?)
 そうはいかない。必ず隙を突いて逃げてやる。部屋に入ってきたら、手に噛みついて暴れてやろう。女だと甘く見ていろ、私はこれでも何度も修羅場をくぐった。中毒者に刃物を突き付けられて薬を奪われそうになったり、集団に襲われそうになったりした、援交を持ちかけたオヤジに首を絞められそうになったりも。でも、いずれももうまく潜り抜けてきた。
 シャワーを浴びて全身をくまなく洗い、真っ白な下着を身に着け、バスローブの紐を固く結ぶ。大丈夫、今度だって――!
 鍵を外す音がして、重い引き戸が開く。廊下と空間を共有する部分が多くなるにつれて、Aの緩んだ顔が現れる。こぶしにボディタオルを挟んで力いっぱい握る。さあ、来い。入ってきた瞬間、一発殴って逃げ出してやる!

 美衣奈は、入ってきたAに向かって握りこぶしを叩きこんだ。しかし、Aはそれを難なく片手で抑え込むと、そのまま腕を後ろに固めて組み伏せた。
「残念、逃げられないなー」
 そのまま後ろ手に手錠を掛けられ、自由を奪われると、さらに首にも首輪が付けられた。首輪にはチェーンが付けられており、そのチェーンを首に巻き付けられた。
「おら立てクソ犬!」
 チェーンが引っ張られて首が締まり、美衣奈は彼のされるがまま膝立ちになった。
「ぐえぇ……くるしぃ、かはっ」
「なーに殴りかかってんだぁ? こういうのは経験済みだ、そんなのが通用すると思うなよ?」
「ぐぅっ……はぁっ」
「なんか言うことないか? ええ?」
 首が一層強く絞められた。気管が圧迫されて息が詰まるなか、美衣奈はかろうじて声を絞り出せた。
「ご、ごめんっ、ごめんなさいっ」
「わかりゃいいんだよ」
 手を離されてチェーンが緩む。美衣奈は思わずしゃがみ込んで何度も咳き込んだ。ほんの一瞬で、美衣奈の目論見は叩き潰されてしまった。
「さあ、着いて来い。聞きたいことがまだまだたくさんあるんでな」
 再びチェーンが引っ張られて美衣奈を立ち上がらせるA。そのまま歩き出す彼を美衣奈は目を伏せて大人しく付いていった。なぜなら、廊下に出るとBも待機していて、美衣奈の後ろにぴったりと付いてきたからだ。歯向かう隙など一切なかった。


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