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特命捜査対策室長 上原若菜
【レイプ 官能小説】

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私だから伝えられるコト-7

若菜は感情を露わさずに穏やかな口調で語りかけるように話す。
「さっき、お母様に会ったわ」
「えっ…?」
「フフッ、やっぱ母親って強いわよね。なんか自分のお母さんを思い出しちゃったわ?ねぇ、あなたはお母様にとって自慢の娘?」
「えっ…?と…、そんな誇れる所がないから…違うと思います。」
「そう?私はそうは思わない。刑事として市民の安全を守るべく頑張ってるあなたをきっと自慢の娘だと思ってるはずよ?あなただってお母様の事を自慢の母親だと思ってても口には出さないでしょう?それと同じ。母親はいつだって温かく子供を見守ってるものなのよ。私はお母さんを殺人者の母親にしてしまった。一生悔いても悔いきれないのよ。辛いわ?私はあなたが殺人者になろうがならまいがどうでもいい。でもお母様を殺人者の母親にする事だけは許さない。あなたが殺人者になるか自慢の娘になるかは今決まるのよ。私は今のあなたのように先輩の墓前で殺人者になる事を誓った。あなたも同じ道を辿ろうとしている。そうはさせないわ?悪いお手本が目の前にいるのよ?悪いお手本を真似しちゃダメ。私と同じ苦しみを味あわせる訳にはいかない。あなたが偉大なる先輩に誓う事は復讐ではなく刑事として犯罪者と戦う決意。サーガを、テロリストをその手で捕まえる勇気と決意よ?銃弾で奴らの頭を撃ち抜くのは簡単。でもそれではテロリストと何ら変わらない。私たちはテロリストではなく刑事だから。」
「…」
正論は分かる。しかし復讐の炎はなかなか消えずにいた華英は即答出来なかった。その気持ちも当然若菜には分かる。しかしその炎を消すのが若菜の役割だ。そう自負している。
「あなたが誓えないなら私が誓う。」
「え…?」
唖然とする華英の前で墓に合掌し目を閉じる若菜。
「渡辺智則さん、あなたの弟子は私が貰います。あなたの刑事の魂は私が引き継ぎます。悪は倒すものではない、救うもの。悪を救い平和に世の中を導くのが我々刑事の役目です。私は悪を許さない。でも憎まない。それを華英さんと一緒にここに誓います。」
若菜はそう言って合掌しながら動かなかった。そんな若菜に弱々しい声で華英は言った。
「渡辺さんは…サーガを憎んでいるのでしょうか…?渡辺さんのご家族はサーガを憎んでいるのでしょうか…?」
その問いに若菜はゆっくりと目を開ける。
「刑事の家族って言うのは常に最悪の事態を想定しながら生きているものなの。あなたのお母様だって同じ。だから刑事になるのを反対したのよ。でも刑事になる事を許した瞬間から自分の娘を失う恐怖と毎日戦ってるのよ?きっと毎日毎日あなたの無事を願ってる事でしょう。毎日無事帰宅した時、きっと今日もあなたが無事であった事に喜んでる事でしょう。刑事の家族は毎日一緒に戦ってるのよ。あなただけが戦ってるんじゃない。刑事も刑事の家族も憎しみに耐えなきゃならない事を理解してる。耐えられないのが犯罪者、耐えなきゃならないのが私達。そう言うものよ?渡辺さんがあなたにサーガへの復讐を望んでると思う?お母様がサーガへの復讐を望んでると思う?渡辺さんの為に、お母様の為にと思うなら、あなたは刑事でいなさい。犯罪者になんかなってはいけない。」
「上原さん…」
きっと今まで誰にも相談できずに苦しんで来たのだろう。華英の目から大粒の涙が溢れ落ちる。
「私は…刑事…。渡辺さんにとっても…、お母さんにとっても…自慢に思って貰えるような刑事に…なります。誓います。」
華英は暫くの間、渡辺の墓に目を閉じて合掌したのであった。


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