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タダシイコタエ
【大人 恋愛小説】

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1-10

ーーガチャリ。


鍵がかかってないことはわかっていた。


自ら浮気相手の望美に自分のアパートの鍵を渡していたからだ。


今日と明日は、恋人の美樹は実家に帰省することになっている。


だからこそ慎重派の幸太が大胆な行動に出られたのだ。


ここに来るまで、駆け足で戻ってきた。


土曜日出勤だったけど、なんとか仕事を早く済ませ、少しでも望美と一緒にいようと駆け足で戻るつもりだった。


あるメールを受け取るまでは。


それは、恋人の美樹からのメール。


『浮気するような人にはついていけません、サヨナラ』


絵文字も何もない、無機質なその文面を見た瞬間の、全身が崩れ落ちていくような感覚は、幸太が未だかつて味わったことのないものだった。


「血の気が引く」という感覚はこういうことだったのか、と足をもつれさせながらも幸太は帰路に着いた。


「美樹っ!!」


玄関のドアを勢いよく開き、革靴も放り投げるように脱ぎ捨て、部屋に入る。


しかし、そこで待っていたのは静寂だけであった。


おそらく望美がいたのだろう、エアコンで暖められた空気がわずかに残るこの部屋で、幸太の弾んだ息遣いだけが、やけに響き渡っていた。


ーーやはり美樹はここに来たのか。


一見して、何も変わらない部屋。


だけど幸太が美樹の存在を確信したのは、テーブルの上に置かれていた、シェリーメイのキーホルダーがついた鍵がポツンと置かれていたからであった。




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