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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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新しい父親-6

「母さんっ!」
「風馬…。」

パート先というのは本屋らしく何かの整備管理不足で本棚が急に倒れたようで、そこで仕入れをしていたおばさんが運悪く下敷きになり。

だが見た所頭に軽く包帯を巻いただけで割とピンピンしている。

「だ、大丈夫なんですか?」
「あぁー全然!後頭部をちょっとがつんってやられたけど脳に異常もないし。」
「本当?」
「おうよ、医者からも明後日には退院しても良いって。」
「良かったぁー。」

自分の親でもないのにとてもほっとして一気に力が抜けた。もしこれで長く入院考えたくないけどこのまま意識を取り戻さずに…なんて事思ったら血の気が引いて、彼があまりにも可哀想過ぎる、こんな信用できるかとどうか分からない人が新しい親になるか悩んでいるさなかに。

「おばさんって案外不死身かも。」
「なぁーをいうんだい!」

本棚が倒れそうになった時、全力ダッシュしたのが功を奏したようで。

「風香っ!!」
「っ!八重樫さんっ!?」

穏やかな空気となった病室で突如響き渡るおばさんの名前を呼ぶ声。

「この人が…。」

集まる視線を全く気にする事なく真っすぐに彼女の元へ駆け寄る彼。

「大丈夫か!事故にあったって宮本さんから聞いて。」
「えぇ、軽く頭を打っただけよ。」
「……はぁー良かった。」

私達以上に深く力が抜け、胸に手を当て、目を瞑り上を見上げる。

「それよりなんでここに!?今日は大事なお師匠さんが来日してアンタの腕を確かめに態々…。」
「そうだね、今朝もメールで話した、師匠様も楽しみにしてた。」
「だったらぁっ!どーしてっ!?痛だだぁ、この日の為に何か月いや何年もずっとずぅーと血の滲むような苦労を、てかその師匠さんは?」
「…カンカンさ、店も僕が勝手に飛び出した事で暫くは謹慎処分、降格もありうる。」
「……だったらどぉーーして!」
「そんなの決まってるだろ!?君が僕にとって大事な人だから…。」
「八重樫、さん。」

その目に嘘偽りは何一つ感じれない、金目当ての詐欺師がこんな事するか?ただの遊び相手にこんなに。

「大丈夫、店は激怒してるけどいずれどうにかなる。」
「………馬鹿、大馬鹿だよアンタは…。」

そういって人目も関わらず彼女を抱きしめる八重樫さん。

「………。」

その姿をじっと瞬き一つせずじっと見つめる風馬君。



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