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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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新しい父親-3

「再婚相手!?お母さんの!?」
「こっ、声が大きいよ…。」

話をしたくいつものドーナツ店で事情を聞く。

先程の彼はどうやら風馬君のお母さんの再婚相手…となるかもしれない方。そういえば前にそんな人が居る、みたいな話を耳にしたっけ。

「じゃーおばさんは今はその人を真剣にお付き合いを?」
「……うん、家にも頻繁に出入りしてる、この前何て一緒に鍋を囲んでしまって。」

さっきからやたらその人を非難するような口ぶりね。

「…風馬君はさぁー、その、嫌いなの?その八重樫さんって人が。」
「……嫌い、って言うよりは少し警戒してるってとこかな。」

ホットコーヒーを一口し、力なくカップを置き、生気を失ったような顔でそう答える。
あまり帰りたがらなかったのはその人と会うかもしれないからだったんだ。

「でも、お母さんはその人の事気に入ってるんでしょ?」
「まぁね。」

どうやらおばさんの友達からの紹介で知り合ったそうで、息子の事や家事の合間をぬって会いに行き、映画を観に行ったり食事に行ったりして、お互いの距離を縮めあったそうで

「それで、ゆくゆくは結婚しないかって話になってるんだ。」
「うん、彼もお母さんの事気にいってるみたいだし。」

その人は何でも地元レストランの副店長をしている、故に収入面も将来的に安心、何よりも去年おばさんの元夫風馬君のお父さんが離婚して彼らは母子家庭として何処か暖かくない家庭で過ごす事となった彼にとっても新しい父親が出来る事は喜ばしい筈。

「…なら問題ないじゃない、その人とおばさんが結ばれれば生活がより豊かになるんだよ
世間的にも経済的にも精神的にも。」
「簡単に言わないでっ!」
「っ!!」

テーブルを軽くバンッとし、キッと睨む。

「知らない人が、よく知らない人が自分たちの敷地にずっと入り込むんだよ!?籍を入れて夫父親となってずーっとあの家に住み続けるんだよ、本当はどんな人で過去に何かあったかもしれない人とっ!」
「風馬、君。」
「あの家は僕と母さんの家だ、そんな本当の意味でどんな人か分からない人に気安く入って欲しくないよ。」
「……。」
「ごめん、怒鳴って。」
「ううん、私こそよく知りもしないで適当な事言って。」

お互いヒートダウンね、それから二人で温かい珈琲と紅茶で気を取り直し。

「…怖いんだ、というか不安なんだその人が本当に良い人で僕それに母さんの大事にして護ってくれて幸せにしてくれるのかって。」
「うん。」

人の考えている事なんて神でもなければ正確に知る事なんて不可能だ、増して彼はいや彼らは一度それで失敗しているから。

「母さんの事愛してる、僕の事も本当の息子のように接すれるように努力する…何て母さんの前で言ってたけど信用出来ない、その場しのぎでかっこつけて信じてもらいたくてそんな適当な事言ってくる人ってよく居るよね?」
「…そりゃまーそうね、口ばっかりの人はよく居る、増してそんな状況ならね。」
「このまま結婚して百歩譲ってその場しのぎのでたらめでなくてもお互い生活を続けていくうちにどんどん面倒臭くなってきてあの日公言したのが嘘みたいに冷たくなって家にも頻繁帰らなくなって、前の父さんみたいに浮気されたら。」
「風馬君…。」
「それ以前に今の時点で全てが大嘘で既にもう別の人と付き合ってて母さんの事は単なる気まぐれでただもて遊ばれているだけなんじゃないかって、いやそれ以上に実は結婚詐欺師で、少ない財産を。」
「風馬君っ!!」
「っ!!」

頭を抱え眉間にしわを寄せ滝のように縁起でもない憶測を口に出し。

「あ、…ごめん。」
「……。」

彼の不安は私の思った以上だった、まぁ確かに私もお母さんに新しい父親が出来たって言われたらそうなるかも。

「…その事話した?おばさんに。」
「話した…って言うよりは問い詰められたかな、「アンタ、彼が嫌なの?」って彼を煙たそうにしてたのすぐにバレて。」
「で、何て答えたの。」
「嫌と言えばそうだけど、別に良いよ母さんが良いなら僕は我慢するって。」
「あちゃー。」
「久々に雷落とされるように怒られたよ。」
「……このまま結婚してもおばさんは浮かばれないね。」
「うん、そうだね。」
「じゃー結婚は取りやめる?丁重に断って今まで通り君とおばさんで。」
「でも君の言うように彼は確かに収入面もとても頼りになる、この前の買い出しでも割と安い品ばかり買ってて、食事でも自分の分は少なく質素で僕には栄養のある食べさせる時は胸が痛むし。」
「彼と結婚すれば生活も裕福になるよね、パートに出なくても良いし、今までやりたくても出来なかった事、沢山出来るだろうし。」
「うん、何より彼と居る時の母さんとても幸せそうだった…。」

こうして聞く限り良い事ずくめな気もするが、きっと違うんだね。

「うーん、結婚断れば折角のチャンスを棒に振るし、かといって結婚した所で君は納得いかないしそうなればおばさんだっていい気はしないし。」
「何とか努力しようとしてはいるんだけど。」
「駄目だよ、そんな無理したって直ぐに分かるよ。」
「でも!そうしないと母さんが、…僕は母さんに幸せになってもらいたい。」
「風馬君。」

重い表情でカップに視線を落とす。

「悪いけど君がいくら努力して八重樫さんと向き合おうとしてもおばさんは喜ばないと思う、私の為にこの子は無理してるって。」
「じゃー取りやめた方が賢明?そんなの嫌だよ折角母さんが母親としてではなく一人の人間として幸せになれるかもしれないって言うのに。」
「やけになんないで、必ず良い方法はある。」

佐伯君も似たような事で早乙女先輩と揉めたって聞いたな。

人間って難しい。




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