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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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断罪開始-1

【断罪開始】

緩いカーブの先にその駅はあった。

徐々に近づく【痴漢専用車両】の窓からも、明るく照らされた駅のホームが見えてきた。

「さあ、もう直ぐ駅に到着するからね。みんな所定の位置で待機して」

陽子はさっきまであげていた艶のある喘ぎから一変させて、張りのある声をあげた。

「あっ、マスター達だ!」

窓に張り付き、進行方向に視線を寄せていた優子が、ホームの上の星司の姿を認めて嬉しそうに声をあげた。その声の韻にも、さっきまで別の男の肉棒で喘ぎ声をあげていた淫靡さの欠片もない無邪気な明るさがあった。星司の姿を見た嬉しさの余りに、優子は自然と窓の外に向かって手を振っていた。

「バ、バカッ!手を振るな!」

優子の天然具合に驚いた陽子が、目を剥いて声を上げた。

「あっ、そうか!」

優子の体がビクッと震え、さっと手を下げた。

「この淫乱娘、ニコニコして一体何考えてんのよ!全部台無しにするつもり!」

「ご、ごめんなさい」

慌てた優子はクルリと反転させると、徐々に近づく星司から視線を外して素知らぬ表情を浮かべた。しかし、チラリチラリと外を気にして、ふわふわした雰囲気は隠しきれてはいない。

「頭イタ…」

陽子は顔をしかめて、こめかみを抑えた。

(何なのコイツは?あたしがどれほど、神経を使ってると思ってるの?)

怒りの眼差しを優子に向けていた陽子だったが、能天気にニコニコと笑みを浮かべる様子に、尖った心が自然と弛んできた。

「ホント、子供なんだから…」

一方、こちらは駅のホーム。

雄一は、1車両に3ヶ所ある停車位置の一番後部に立ち、速度を落とす【痴漢専用車両】に視線を向けていた。すると、視界の中に、にこやかに手を振る優子の姿が入り、雄一はひっくり返りそうになった。

「うそだろ…」

慌てた雄一は、咄嗟にターゲットの市ヶ谷深雪の肩を掴むと、電車に向いていた視線を自分の方に向けさせた。

「きゃっ!」

紳士的だった雄一の強引な行為に驚いた深雪だったが、心の中では、その強引さを待ち望んでもいた。

「ご、ごめん…」

(うふふ、目を血走らせてるじゃない。もう落ちたも同然ね。今日こそ抱かせてあげるわ)

これまでの2回のデートで、深雪はまだ雄一に体を許していなかった。

と言っても、見映えのする雄一に、ナンパされた初日からそのつもりだったが、軽そうな雰囲気のわりに、手を出してこなかったのが本当のところだ。

(軽い女と思われたら堪らないわ)

自意識の高い深雪は、ヤキモキしながらも自分の方が、手を出させなかったと思い込んでいた。深雪はそんな風に都合よく思考を切り換えられる女だった。

深雪は雄一に声を掛けられた時のことを思い返した。自意識の高い深雪は、雄一の軽い調子の誘い方に初めは訝しんだ。しかし、高級ブランドを着こなした上背がある雄一の容姿に気づくと、直ぐに誘いを受け入れることにした。

誘われるまま乗った車は高級車、さらにハンドルを握る手には、誰もが知る高級時計がはめられていた。

(嫌みのないホワイトゴールドだし、誘いに乗って正解だったようね)

見栄っ張りな深雪は高級ブランドに詳しい。助手席に座った深雪は、自分の判断が正しかったことに喜んだ。この降って湧いたようなセレブとの出会いは、高級嗜好の深雪の心を掴むには充分だった。

我が儘に育った深雪は、自己中心的なところがあった。人と接するときには、自分と比べて優劣を考えるのが常で、深雪が格下と認めた相手には手厳しかった。それが高じて、自身が格下と決めつけた者の幸運は許せなかった。


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