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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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素敵な初詣-3

当然のように今年も長蛇の列で二人で肩を並べ、少しづつ神社が大きく見えて。

「やっぱ似合うわぁー。」
「そう?喜んでくれて良かったよ。」
「ありがとう。」
「ふふっ、こちらこそこうでもしないと着る機会何てないしね。」

着物の話題で盛り上がったのち、僕らは去年の話をふと思い返し。

「…去年も色んな事があったよね。」
「そうだねー。」

彼女が妊娠したり、彼女のお爺さんが倒れたり、その彼に「孫を頼む!」と言われたり。

「去年は旅行に行ったなぁー、佐伯君と。」

あの頃僕は彼女の彼氏ではなく、嫌らしい殺人犯兼ストーカーで、後に一条君から聞いたら僕の事で色々と揉めたとか…。

それがこの一年でその彼女が僕の隣にいて。不思議なものだ。

「お爺さん、そんな遠い所まで運転したんだ、なんというかエネルギッシュだね。」
「…そう、だね。」
「?どうしたの。」

実は最近また彼が体調を悪くしたとかで。

「歳って言ってしまえばそれまでだけど、でも。」
「若葉ちゃん…。」

やっぱり、心配だよね。

「ごめん、適当な事言って。」
「ううん、こっちこそ新年早々落ち込んで。」

少し気まずい空気はあったけど、すぐに切り替えるように。

「それにしても君のお母さん生き生きしてるよね、最近。」
「うん、新しい恋にワクワクしてるんだね。」
「えっ?」
「あーいやこっちの話。」

そうこう話しているうちに神社が大きく見え、小銭を賽銭箱に投げる。お互い何を願ったかは語らないが、きっと良い事に違いないと確信している為、あえて聞かず。それから僕たちはおみくじを引きに向かい、百円を入れ、おみくじに無造作に手を伸ばし。

「あっやった!大吉♪」
「うぁー良かったね、……うっ!」

他人の幸運を喜び自分の不幸を嘆く、目にはハッキリと小吉と記され。

「やっぱ気分が良いね、実は縁起が悪いといけないと沢山おみくじに大吉が入っている何て話もあるとはいえ…、ねぇ風馬君はどう……。」

ノリノリな彼女がヒョイと僕の残念なおみくじを目にし、言葉を失い。

「…ふふ、少ない確率で凶が出る何て逆にラッキーかもね。」

すっかりブルーな気分で苦笑いを浮かべ。

「凶じゃなくて小吉でしょ?」
「同じだよ、運が少ないって訳よ、普通の人より…。」

いかん、こんなに落ち込んで…、たかがおみくじくらいでうじうじと。そんな僕を見かねて彼女は僕のおみくじを貸して欲しいと手の平を出し。

「?何する気…。」

彼女は自分の大吉と僕の小吉を器用に結び、近くの沢山結ばれたおみくじの所につけ。

「私の大吉を君にあげる、そうしたら君も私も同じ中吉で一緒だね♪」
「っ!」

思わずキュンときてしまった、彼女の笑顔が一段と輝いて見えた。

「…でも、そこに結ぶのって納得いく結果にならなかった人がつけるんじゃ。」
「いーの!そんなの個人で決めればいいのよ!ささっ楽しみはまだまだ続くよ、ほらお守り買わないかい?」

勢いがのってきたようで、次々と色んな所へ出向く。

「色んなお守りがあるねー。」
「うんー、昔は友達が出来るような、恋人が出来るようなお守りを買ってたけど、今はそんなの必要ないみたいね。」
「僕これにしようかな。」

お守りを見渡し、僕が「長生き、健康」のお守りに手を伸ばし購入した。

「風馬君って、堅実ねぇーまぁやっぱ人間健康が一番よね。」

これは僕に対してのではなく、そのお守りをそのまま彼女にすっと手渡し。

「くれるのー?いやーでも私だって特に大きな病気は。」
「これ、うちに帰ったらお爺さんに渡して。」
「えっ?」

先程並んでた時の会話を思い出し、それを素直に伝え。

「…ありがと。」
「うん。」

少し涙目で落ち着いた声でお礼を言い、人目も関わらず抱きしめてきて。

「今年も君と幸せな一年を過ごせて、神様には感謝だね。」
「そうだね。」

そして僕らは今年の絆を改めるようにぎゅと手を握り素敵な初詣を後にした。




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