投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

double-dealer
【学園物 官能小説】

double-dealerの最初へ double-dealer 12 double-dealer 14 double-dealerの最後へ

一瞬の違和感-5

そんな折、シャーペンを持つ手が止まる。


「あれ、これどうしてこうなるんだろ」


視線の先には数学のプリント。図形の証明問題だ。


友美はただの計算問題なら得意であるが、こういう文章問題は苦手であった。


小さな頃から本を読むことが好きだった、根っからの文系人間の友美だが、数学に関してだけは、文章問題が一番不得意である。


勉強が好きだけど、年々難しくなっていく数学は、年々嫌いになりつつあった。


「奈緒に聞いてみよ」


奈緒は友美と違って、理数系に強い。


だから友美が国語や英語なんかの文系分野を奈緒に教え、奈緒が理科や数学の理数系分野を教える、ギブアンドテイクが成り立っていた。


今日は家族で食事に出かけると言っていたけど、まだ5時を過ぎたばかりだし、きっとまだ家にいるはずだ。


そう思いながら、友美は机の隅に置いてあるスマホを手に取ると、慣れた手つきで奈緒の家に電話をした。


「はい、桜井でございます」


呼び出しのコール音を2回ほど聞いた所で、品のよい女性が電話に出る。


真面目な奈緒は、携帯電話とかスマホを持っていない。


「あ、相馬ですけど……」


「ああ、友美ちゃん?」


電話の主が友美だとわかると、奈緒の母の声がすましたものから、フランクなそれに変わる。


何度も奈緒の家に遊びに行っているから彼女とも仲良しなのだ。


「あの、数学の宿題してて、わからない問題があったから、奈緒に教えてもらいたくて」


「あら、そうなの」


一瞬の間があってから、奈緒の母はそう言った。


そんな彼女の反応に、ふと胸がざわついた。


いつもなら、ここで保留音が鳴ってすぐに奈緒が出るはずなのに。


一瞬だけ押し黙った奈緒の母の反応に、知らずと心臓の鼓動が速まっていくのだった。





double-dealerの最初へ double-dealer 12 double-dealer 14 double-dealerの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前