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混線
【コメディ 官能小説】

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混線-1

 もう夜更けと言うより明け方だ、結局徹夜になっちまった。
 この図面の納期は今朝9時まで、それまでになんとしても仕上げないことには……。
 しかし、幸いにして仕上がりは近い、2時間ほど前に一通り描き上げた図面をプリントアウト、間違いや不整合のチェックも今終えた、後は赤ペンでチェックした部分をCAD上で修正すればOK、もう小一時間もあれば終わるだろう……。
 もうコーヒーも欲しくない、眠気覚ましのドリンク剤も飲みすぎてトイレばかり近くていけない、第一、これを送信してしまえば心置きなくベッドにもぐりこめると言うもの、もうカフェインは邪魔だ、それよりも……。

 俺はダブルのウイスキーを注いだグラスを手に再びPCの前に戻る。
 さっきまでの切羽詰った感じはもう失せて、気持ちはゆったりとしている。
 ウイスキーはすきっ腹に沁み、そこから体中に広がって行くようだ。
「さあ、もう一息だ、さっさと終わらせてしまおう……」
 そうひとりごちたが、いまひとつやる気が出ない、それはそうだろう、夕食もそこそこに一晩中テンションを上げっぱなしで仕事をしていたのだから。
 まあ、ここまで来ていれば少しくらい休んでも大勢に影響はない、俺はデスクに足を乗せ、つけっ放しだったラジオのボリュームを少し上げた。

 「おや?」

 しばらくの間、ちょっと懐かし目のポップスやロックに身を委ねていたが、なにやら音楽とは別に人の声が聞こえるような気がする。
 チューニングダイヤルを微妙に動かすと、音楽は薄れ、声がはっきりしてくる。
 
「……ああ……お前……凄……逝っちゃ……」

 途切れ途切れだが、どういう内容なのかおぼろげにわかるではないか、これはどうしたって気になる。
 事務所は古い木造アパートの一室だからそんなにボリュームを上げるわけにも行かない
 俺はラジオに耳をくっつけるようにしてダイヤルを微妙に操作する。
 すると、少しづつだが聞き取れるようになって来た

「ああ……●きいわ、△★がは☆■け≧うよ……」
「こαでど▲だ」
「ああ!▽く、また▽っち◎う!」
「なん□でも▽かせて★るぜ……おら■ら、これで▲うだ?」

 大量のカフェインで無理やり眠気を飛ばして保って来たテンションはすぐには緩まない、そこへ持ってきて安堵感とアルコールによる弛緩、長時間の追い込み作業による疲労、ここ数週間続いた睡眠不足状態……俺の脳内は磁場が乱れ切っている状態だ、そこへ持ってきてここしばらくは女房にも触れていない……。

 隣室に漏れない程度にボリュームを上げ、耳をそばだて、ダイヤルをトントンと軽くつつくようにして調整し続けるとだいぶ聞き取れるようになって来た。
 
 これは……ただの濡れ場ではない、監禁・輪姦・陵辱、しかも女は大好物の30代人妻のようだ。
 しかもAVっぽくない、現場で盗み聞きしているような感じだ、これは本物なのか? 盗聴マイクの電波が紛れ込んでいるのか?……。

「ああっ!そ▽な!ま▲とう▼ろをいっ☆んになんて!」
「お*おら、ぶ□こむぜ、ア▼ルにもぶっ☆いのをぶち●んでや△ぜ」
「きゃ▽!さ◎る!さけ★ゃう!」
「おお、し□るぜ、こい▲つはいいや」
「あ▽っ!……いい、いっ★ゃう、☆っちゃう!」
「お*さん、なか▽かのい●ら▲じゃねぇか、二本く□え◎んで★いひい言うなんてよ」
「そん△ことい■ないで、ああ、す▼い、い△ぅっ!」
「お○さん、お▼のもく☆えてもらおうか、そのい○っぽい★ちびるでよ」
「ああ、や▽て、三人いっ□んになんて★り……うぐっ…」
「おお、でっかいおっ▲いがさ☆しがってるぜ」
「よしきた、俺が●でな☆さめてやるぜ」
「▽ぐぅぅぅぅ」
「こっ☆側には、*□△だ、ぶる▽る○☆わせてやるぜ」
「ぐはっ」
「おらおら、お★*がおろそかになってるぜ、イ●マチ☆にしてやろうか?」
「うぷ……○あっ……」

 真剣に耳をそばだてていると、音声だけの方が想像を働かせる余地がある分、AVを見るよりもエロティックだ、しかもどうやら本物の……。
 ところどころ聞き取れず、そこは脳みそを働かせて補う他ないから余計に集中してしまう……。

 これは仕事どころのテンションの上がりようじゃない、脳みそに血液がどんどん送り込まれているのを感じる、しかも俺の脳みそはずっとテンションを上げていたせいで柔軟性を失っていて、その上すきっ腹に流し込んだアルコールも効いて来た、こめかみの血管が脈打つ音が聞こえるようだ。
 これはやばい!エンスト寸前だった脳みそが勝手にフル回転している、このままだとオーバーヒートだ、レッドゾーンだ!

 そう思った瞬間、頭が割れるように痛み出し、目の前が暗くなって行く。
 
 死ぬのか?……今死ぬのか?……俺はこんな死に方をするのか?……

 意識が薄れて行く……ちくしょう、まだ人生に心残りがあるぞ。

 せめて最後まで……聴きたかったの……に……。


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