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オーディン
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オーディン第三話「姫様」-2

「何なんだお前は、こんなにもアラストール引き連れて、悪魔のボスかよ」
ファウストの目の前には翼の生えた巨大な犬が一匹と、犬に召喚されたアラストールたちが彼を囲んでいた。アラストールたちが持つ斧が不気味に光る。
「我が名はグラシャラボラス、こやつらを倒せれば話ぐらいは聞いてやろう」
「…んだと、生意気な“犬”め、こんな奴等瞬殺だ、分かったか“犬”」
「……ならばやってみせよっ」
カチャ、ファウストは剣を抜くと走り出した。ファウストの剣は近付くアラストールたちを一匹一匹と流れるように切り裂いていく。
「…腕はさほど悪くないようだな」
「58、59、60、61、ラッスト」
ズバッ、ファウストの剣が、最後のアラストールを頭から真っ二つにした。
「どうだ犬、話を聞いてもらおうか」
「…周りをよく見てみろ」
「…てめぇ、きたねえぞ」
ドプンッ、地面の中から次々と這い上がってくるアラストールに、ファウストは完全に包囲された。
「ニブルヘイムにいる全てのアラストールを相手にするか、私の前から消えるか、まあ結果は分かりきっておるがな」
「…いいだろう」
「ん、今何と」
「やってみたかったんだ、アラストールの数、かぞえるの」
「口だけならなんとでも言えよう…やれ」
バッ、合図にあわせてアラストールたちが襲いかかる。ファウストは冷ややかな目で襲いかかってくる斧を見つめる。
キュイン、鉄をひっかくような高い音が鳴り響く。宙にういたアラストールたちの体に赤い線が刻み込まれた、次の瞬間、赤い線を切れ目にして、アラストールたちの体が上下に真っ二つとなった。
「今のは“ルーン”…」
地面に落ちていく真っ二つになったアラストールたち。地面に落ちたとたん、それらは黒い煙となって消えた。
「犬、悪いが俺の強さは本物だ」
「ルーンが使えるだけでいい気に…、まさかその剣─」
「魔剣“ストームブリンガー”、俺が負けるはずない理由、やっとわかったか」
自慢気に剣をかかげるファウスト。
「くっ、本当にアラストールを滅ぼすつもりだったか…、よかろう、話してみよ、事情によっては助けてやってもよい」
「物分かりが良い、さすが悪魔のボス、実は──」



「それにしてもグラシャラボラスを一人で…」
「しっ、声を聞かれたら姿を消した意味がない」
「……」
幅広い大きな廊下があった。トンネルの形をしていて、ガラス張りのおかけで青空がよく見えた。その廊下でファウストとロキの声がする、しかし彼等の姿はそこにない。
「“天空の城”か…」
「何だ、さっきは注意したくせに、今度はお前が─」
「しっ、誰か来る」
「……」
プシュッ、突然壁に穴があいて、中から白い軍服の男が2人、何かを話しながら出て来た。
「どうだ“姫様”は」
「扱いにくい、連れてきかたが無理矢理すぎたんだ、いくらなんでも城を焼いて、姫だけさらうなんて─」
「仕方なかったんだ、総帥に逆らえるのかぁ、お前」
「……」
「ま、“姫様”のルーンが役にたつのは間違いないんだ、頑張ってくれ、それより…」軍服の男たちはそのまま歩き去っていった。
「聞いたかロキ、“姫様”はまだ生きているようだ、間に合ったな」
「こっちだ」
「んっ」
ロキはファウストの腕を引っ張り、走り出した。


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