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One Way
【片思い 恋愛小説】

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One Way-1

〜相沢 真佑Side〜

いつもと同じ彼の顔。
いつもと同じ彼の声。
だけど・・・いつもより機嫌が良い彼。
まさか、こんなことになるなんて・・・。


から元気で乗り越えるしかなかった。
『俺、彼女ができたんだよ〜。』
そう言う彼の笑顔の前で、あたしは本心を隠すしかなかった。
『良かったね!』
あたしは、上手く笑えていただろうか?
友達、という近くて遠い存在が今は・・・辛い。
ぎゅっ・・・と唇を噛み締める。

あたし相沢 真佑は、彼、根岸 拓海が好きだった。
あたし達はいわゆる幼馴染ってやつで、ずっとお互い側にいた。
側にいるのが当たり前だった。

側にいすぎて、その位置に甘んじていたのも事実。
拓海に好きな人がいるのだって、相談を受けていたから知っている。
そしてその彼女には、他に好きな人がいるのも知っていた。
だから・・・居心地のいい『友達』の場所にいた。

拓海が彼女を本当に好きなのを知っていたから・・・。
臆病なあたしは、振られて今の関係を崩すくらいならこのままでいいと思っていたから・・・。
まさか、彼女が好きな人を諦める。なんて思わなかったから・・・。

鼻の奥がつんーーーっとする。
「家まで、もちそうもないや・・・。」
ははっ・・・と乾いた笑いを漏らし、誰もいない場所を求め校内をとぼとぼ歩く。

行き着いたのは、屋上。

ドアを開いて、周りを見渡す。
3月のこの寒い時期に屋上に来る人なんているわけがない。
案の定、誰もいなくて望み通り一人になれた。

ドアを静かに閉め、空を見上げる。
これから雪でも降るのか・・・というような厚い灰色の空。
「ははっ・・・あたしと一緒だね・・・。」
空笑いする。

『俺、彼女ができたんだよ〜。』
再び、脳裏に拓海の嬉しそうな声と笑顔が横切る。
「・・・ふ・・・えっ・・・。」
ぽろぽろと我慢していた涙を流す。

好きだった
大好きだった
例え、自分が想われていないって分かっていても
それでも・・・・

暫くフェンスに凭れ掛かりながら、泣いていた。



どのくらいそうしていただろう。
それは、突然だった。
「やほ〜、マイハニー!迎えに来たよ〜。」

がちゃりっ、と突然屋上のドアが勢いよく開き、能天気な声が屋上に響く。
びっくりして、流していた涙が止まる。
声のした方角を見るとにこにこと笑っている松島 一樹がいた。


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