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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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あたるの選択-5

「親父…。」
「……。」

真彩に付き添われ改めてこの家を目の当たりにする。

相変わらずの小さくて古い建物、俺はここで嘗て親父を二人で暮らして居た、でも二人で暮らす、と言うのも名ばかりだ、実際親父はほとんど家を空け、毎日毎夜酒を飲んで酔っ払って夜道をブラブラしてばかりで奇しくもそのお陰で家事はひと通りこなせるようになった訳で。

ここでの日々は絶望に満ち溢れていた、家に帰っても誰も迎えてはくれずあるのはただただ暗い地味な部屋、食い散らかしたコンビニ弁当に散乱したビール缶、弁当や酒の臭いで一杯で、帰るのは本当にいつも鬱で、蓮から家に泊まらないかって言われる時は本当に助かる。

そんな日々を思い返すと手が震えてきた。

「嫌だ、戻りたくない。」
「……。」

何言ってんだ俺、ちょっと考えれば別にまた住む訳じゃない事は分かってる筈なのだが。
するとそれを見た真彩が俺の手を包み込むように強く握ってくれた。

「あたる、あたるなのか?」

扉が開かれ中から一人の中年男が出てきた。

「親父…。」

久しぶりの息子との再会に目を見開く父親。ただその姿に驚きを隠せないでいた。ごく普通の男性が身に纏うようなズボンにジャケット、顔も髭が剃られ髪もやや整っていて、前はゆるゆるのズボンに破けたTシャツ、ボサボサ頭に髭はぼうぼうだったのに。それはハッキリ言って別人だ。

「おじさんね、心を入れ替えて今は建設業で働いてるみたいなの。」

真彩から聞いた話は本当のようだった。更には。

「もしかして、彼方があたる君?」

俺たちの前に現れた中年の落ち着いた感じの女性。

どうやらこの人は職場で知り合った事務の方らしく、真剣な交際をしているらしい。

そっか、親父もようやくまともな人生を送るようになったんだ。

「あたる!今まですまなかった、許してくれ。」
「親父………、良かったよ、元気そうで。」

それからどうこう言うでもなく父親の安定した生活に胸をなで下した所でもう二度と足を踏み入れる事もないこの場所を後にした、…二度とない…かぁ。

成人したら兄貴と二人で酒でも交わそうかな…。



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