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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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あたるの選択-2

「ふぁーーーー、うーんやっぱ優華の入れる風呂は最高だなぁ。」
「そうだね、彼女の性格いや想いが出てるみたいだ。」

湯船は勿論、壁や鏡それに洗面台やら全てが徹底してピカピカに磨き上げられている、風呂場独特の臭みもカビもまるでない。

「偉いよね、自分だって共働きで仕事疲れで休みたい筈なのに。」
「あぁ、全くだ…彼女は感謝してもしきれないよ。」

夜になっても彼女がくたびれたような顔は一度も見たことがない、この風呂場掃除も一度は溜息をつくもその後気合を入れ直した姿が容易に浮かぶ。

「さて、体洗うか。」
「あっ、俺背中こすってあげる。」
「そっかぁー、じゃ頼むぞ。」

と半ば嬉しそうな顔で道具を手渡す。

目先に写る兄の大きな背中。

「懐かしいなぁ。」
「何が?」
「ほら俺がまだ小学生の時、野球の試合をやってた頃があったろ?」
「あぁ、お前が可愛い女の子の声援に見とれよそ見ばっかして敵からも味方からもバッシングを受けたアレだろ?」

くっ!そんな事ばっかり覚えやがって、あの後逆転勝ちしたのに!

「あのあと皆でママさん達が作った弁当を食べて、その後またはしゃいで、終わりの時間が来て車で眠りについて、いくら体ゆすっても起きないからおんぶして。」
「その時うつらうつらと覚えてるんだ。」
「何だ起きてたのかよ。」
「まぁ後々からだけど。」

その頃から兄には色々と甘えてたけど…。

「兄貴…。」
「んー。」
「小さい頃からずっとこんな俺の面倒を見てくれてありがとう。」
「……。」
「俺、いつか一杯働いて兄貴の事、ラクにしてあげるからね。」
「………。」

何も言い返さない、すると罰悪いようにとっとと背中を洗い流し、洗面台から腰をあげ
半ば強引に今度は俺に座らせ、チェンジする。

「…良いんだよ!お前が可愛いから!別に!」

不器用に喋り出す。

少々力み過ぎに擦る兄、俺は少し注意し、軽く謝り力がほど良い加減となるのが肌で感じ

「お前、随分細くないか?」
「?そうか…。」

あの父親と暮らしてきたせいかロクな食事もせず、体力的に精神的にやつれていたのかも知れない、それと父と喧嘩して殴られた傷と酒とストレスで思わず兄に殴られた痣も目にしたそうで。

「…どうした?」
「……。」

それを目にし先程まで動かしていた両手がピタリと止まり出し、兄の肩が小刻みに震えだし…。

「…ごめんな、あたる、本当に!」
「兄貴。」

それは今まで独りぼっちにしてごめんと言う意味だが。

「良いよ、もう過ぎた事だし。」
「でも!」
「今はこうして兄貴に優華さん、それに北海道の友達が俺の事想ってくれてるんだ、もう充分過ぎるくらいに幸せだよ。」
「あたる…。」

蓮達の事を思い浮かべると会いたくなってきたな…、それに真彩。

「今、何か真彩って聞こえたけど誰だよそれ。」

げっ、聞こえてたのかよ。

「べっ別に!そんなんじゃねーよ!」

俺もまた不器用に弁解し出す。

「やっぱ俺たち似た者兄弟だね!」
「だなっ!」

タオルと下着を持ってきた優華さんが風呂場で耳にする陽気な兄弟の笑い声に笑みを浮かべる。

「例え離れたって俺はずっとお前の味方だからな!」
「うん!…だぁーい好き!」

湯に再び浸かり、裸で抱き合う俺ら。

「うふふ、……あらやだ鼻血?」


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