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思い出の君、今いずこ
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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思い出の君、今いずこ-10

「何で……何で、俺を呼んだ?」
「やっぱり、雅樹には言っとかないといけないかなーって」
 昔の面影を残す顔で、ふっと美由が笑った。
「実はね、わたし、雅樹と過ごした頃のこと、ちゃんと覚えてるんだ」
「!」
 雅樹の心臓が、どくんと大きく跳ねる。
「あの秘密基地も、お別れの日のことも、何もかも、全部」
「じゃ、じゃあ、約束も?」
 美由の言葉尻にかぶせ気味で、雅樹が聞いた。
「うん。十年後の八月、また、会えたね。雅樹」
 ようやく、雅樹の知っている、美由。
「だったら何で、さっき……」
「うーん、なんかもうあまりにピュアすぎてねー、あの頃のわたし。もしかしたら振り返って
今の自分と比べるのが嫌でさ、咄嗟に嘘ついちゃったのかも。ごめんね」
 ぺろりと舌を出して雅樹に応えると、美由はさらに続けた。
「でも、今さら昔の自分を演じることなんてできないし、雅樹に嘘をつくのも嫌だったから、
もうこの際全部さらけ出しちゃおうかなって」
「だ、だからって……」
 雅樹の顔が、苦しそうに歪む。
「うん。いきなりあんなの見せられたらびっくりだよね。ていうかどん引きだよね。ごめん。
最初は四人に事情を話して、その上で雅樹と話をするつもりだったんだけど、武田くんが急に
エッチしたいって言い出して、みんなもそれに賛成して……ほら、わたしってば忠実なる性の
しもべだから」
「……」
 冗談めかして笑う美由に、雅樹はただ顔を強張らせることしかできない。
「信じ、られないよ……」
 それでもどうにか、胸の内から言葉を引っ張り出す。
「信じられない、じゃなくて、信じたくない、じゃない?」
「……」
 雅樹に、返す言葉はなかった。美由の鋭い指摘は、まぎれもなく事実だった。
「じゃあ……」
 美由が、雅樹の目を正面からじっと見据える。
「雅樹も、わたしと……してみる?」
「!」
 雅樹は目をかっと見開いたまま、全身を硬直させた。
「っ……」
 自分の中に湧いて出る感情の正体が何なのか、それさえ分からぬまま歯がゆそうにぎり、と
唇を噛む。


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