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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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優しさに触れ…-4

「んもぅー風馬君ったらぁー、人前であんな大胆と。」
「ふふ、でもいつか紹介したいって楽しみにしてたんだもん。」

教科書に参考書にノートをテーブルに広げ口を動かしながら手も動かす。私もいつか正式にさっきのように、おばさんは私を受け入れてくれるのだろうか?私のお爺ちゃんとお母さんも彼を受け入れてくれるのだろうか?

彼は軽く溜息をつき筆を止める。

「?どうしたの、分からない所でもあった。」
「息子に恋人が出来たって知ったら少しは元気出るかなぁ。」

意味深な言い草。彼と目が合いそれについてゆっくりと説明する。

どうやらおばさんが元気がないのは病気とかでなく、おじさんが原因のようだ、彼は現在
単身赴任中なのだが、別にそれだけが理由ではなく。

「…その、浮気してるんだって?」
「…うん。」
「御免なさい。」

直球過ぎたかな、風馬君は家族を大事に思ってるのに、おばさんには父親が今は居ない分さっきみたいにお使いに行ってあげようとしたり、皿洗いや料理もある程度やり、パン屋でのバイト代の半分は家に入れているらしく、またおじさんにだって寂しくならないようにとビデオレターを送ってあげたりとか、本当に心優しい子。

「風馬君は親を大切に思ってるんだもんね。」
「そんなんじゃ、僕の為に色々してくれたもん、恩返ししようと思うのは当然だよ。」

転校の事、私に想いを寄せている事、彼なりに思いもあったのだろう。

「単身赴任が決まる前から、なんだ。」
「……。」

帰りが遅かったり、体から妙な香水の匂いがしたり、知らない間にネクタイが無駄に高価で派手なものに変わってたり、それだけなら浮気の証拠にはならないでしょうけど、女のカンで怪しいと疑ったおばさんがこっそり彼のケータイや持ち物を調べると結果はクロで
知らない女性の名前が履歴あり、持ち物からも空の弁当箱が、基本弁当は作らないのに。
問い詰めたらただの会社の同僚だの、弁当は自分で作ってみただのシラを切られ。

そのせいで夫婦でぎくしゃくし出し、口を開けば浮気でしょ!?ちげぇよ!とそればかり
ただでさえ浮気は人の思いを踏みにじる最低行為、それでもおばさんはその程度なら意外と気にしなかった、でも…。

「食事が質素になったってどういう事?」
「…それは。」

おじさんはおばさんを傷つけるだけじゃ飽き足らず本来家に入れる筈の給料をおばさんに
渡さない、いや本来妻子を養うのに必要な額を渡さなかったのだ、約三分の一しか渡さず
おばさんが問い詰めるも会社の経営悪化がどうこう言って、それなら給料明細書見せなさいよって言っても忘れただの落としただの、避けられて。要するに残りのお金はおばさんでも息子にでもなくその不倫相手に貢いだと言う事だ。

「信じられない…。」
「…。」

あまりの身勝手さに思わず口に出てしまった、どうして、子供の頃はあんなに陽気で優しかったのに、転勤続き何年のも歳月が過ぎるとこうも変わるものだろうか。

単身赴任も彼にとっては都合が良かったのだろう、一度も連絡も取らず折角息子である彼が頻繁にビデオレターを送ってあげてるのにお礼の返事もまるでない、封すら切ってない
姿が目に浮かぶ。

そんな悪態の数々のせいでおばさんは精神的にやつれ、金銭面でも向こうから送られるあまりにも少ない仕送りじゃ母親を家庭を助ける事は出来ないと思い、バイトを。

「…うっうう、ひっく、あ、ごめん。」
「風馬、君…。」

気づけばお互い本来の目的を忘れ筆を止める。

「どうしてこんな事になっちゃったんだろう、昔はあんなに仲が良かったのに。」
「……。」
「このまま離婚、何て事になったらどうしよう、そんなの嫌だよ…。」

この事実は彼をとても深く傷つけるもので。小刻みに震え体を丸める。

大好きな人が悲しんでる、それは他の何よりも不幸な事、私までどんどん胸が締め付けられるように苦しくなってきた。

彼、助けてあげたい、救ってあげたい。

私は彼を包み込むように優しく抱きしめる。

「大丈夫、大丈夫だよ…風馬君。」
「若葉、ちゃん。」

おじさんの件は気のせいだ、すぐに改心する、とはあえて言わない、根も葉もない根拠で物を言うのは失礼だ。

「…ありがとう若葉ちゃん、でも僕なら大丈夫だから。」
「風馬、君。」

涙目でそう私を見つめお礼の言葉を言う。

「…ちょっとブレイク=休憩しよっか!ちょっと待ってて。」

気持ちを切り替え、急に活発的になり、力強く立ち上がり部屋を出る。


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