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なりすました姦辱
【ファンタジー 官能小説】

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第二章 報復されたシングルマザー-5

 汚い男の、汚い男茎をしゃぶらされているのに――あろうことか包茎で溜まった汚れを口で掃除させられているのに、汐里は膝をつき背を伸ばした姿勢で、唾液とともに拭い取った粘体を嚥下してみせた。瞳を愉楽に潤ませ、ヒップを艶めかしく揺らしていた。
 躊躇の言葉を漏らしつつも見せた、淫りがわしい汐里の反応を保彦は見逃さなかった。淫乱奴隷だと罵倒して、羞恥の記憶を呼び覚ましてやる気も失せるほど呆気ない。会社に忍び込むというリスクを犯したのに、得た悦びはあまりも薄かった。
(……ちっ)
 保彦は男茎を仕舞うと、両手を床について息を切らしている汐里を見下ろした。卑劣な男に口淫を強要されて打ち拉がれる女、といった体で床にへたり込んでいるが、その床が全く汚れていないということは、この女は一滴も漏らさず口で受け止め、飲み干したということだ。苛立ちを散らすための口淫だったが、余計に募っただけだった。
「ほら、もう仕事に戻るんだろ?」
 とにかく金が出に入ったのだから退散しよう。
 立ち上がって促す。汐里も立ち上がると、両手でスカートを払って乱れを直した。保彦は汐里に先導させるわけでもなく、自らドアのほうへ向かった。土橋が何の未練もなく退室しようとするから、汐里も慌てて床に置いていたタブレットや財布を集めて後を追ってくる。
「――あら、広瀬さん」
 会議室を出るや声がかかって、汐里とともに保彦も驚いた。
 振り返ると女が立っている。白地のマーメードタイトに黒のブラウス。そして何より赤いジャケットが強烈な存在感を与える、凛然とした姿だった。
 土橋の家を訪れた時の汐里が、露出した脚の肌質の若さによって人を惹きつけようとしていたとするならば、黒ストッキングの下肢を膝頭だけ出したこの女はスカートのフォルムラインとスリットから窺わせる悩ましい脚線美で見る男を惑溺させようとしているかのようだった。
 汐里に比べれば、ヒップラインにも太ももにもボリューム感がある。だが背が高く、そこへきて高いヒールまで履いているものだから、ムチムチしている印象は全く与えずに、高貴にも思える色香を漂わせている。
 そんな女がヒールを鳴らしてこちらに近づいてきた。
 三十路手前か越えたか、少なくとも汐里よりも年上だろう。美人だった。
 ナチュラルとは言えない厚めのメイクだが、この女のオーラにはその方がマッチしていた。キッチリと巻いて留めたダークブラウンの髪は照明に艶やかに照っており、こめかみに一束残した以外はサイドに前髪を撫でつけている。そんな目立ったヘアスタイルも、自分の存在は一般社員とは一線を画していると主張していた。キャリアウーマン、なんて言葉は最早死語かもしれないが、目の前の女はまさにその言葉を体現しているかのような気高さがあった。
(おっぱい、でけ……)
 胸元でボタンを一つ留めたジャケットの弯曲が、女のバストの大きさを容易く推定させた。鼻先に薫ってくる香水が、視線の誘い水になる。
 女がチラリとこちらを見て、素早く保彦の目の向き先を確認したあと、視姦を責めもせず、腕組みをして汐里のほうを見やった。
「こんなとこで、何してるの?」
 汐里を見ると、精飲の興奮で赤らんでいた顔が、この僅かな時間で青白く強張っていた。
「あ、あの……、ちょっと打ち合わせです」
 そう言われて女は、その打ち合わせの相手だったろう保彦の方に再び目線を向ける。今度は冷たい目が細まり、明らかに保彦への警戒心を強めていた。
「えっと、あなたは、たしか……」
 提げている社員証をチラリと見てきた。見た目のインパクトがある土橋の存在は知っているが、名前が思い出せないようだ。
「……土橋、です」
「ああ、確かそうだったわね。人事コンサルのほうの所属だったかしら? ……でも休職したって聞いた気もするけど」
 まるで汚いものを見るかのような。そんな形容がぴったりな目線で、女は眉間を寄せ、保彦の全身を一往復見た。ヒールを履いている分、土橋より高いところからの目線だった。物理的な高さだけではない、人間的な高低があることも匂わせる。
 保彦は汐里を一瞥したが、うまい言い訳を思いつかないのだろう、伏し目がちに立ち尽くしているだけだった。
「……会社に置いてたものがあったんですが、忘れてまして。家で過ごすとなると無いと困りますから、取りに来たんです」
「あ、そう。でも人事のあなたが、なんで経営の広瀬さんと?」
「フロアまで行くのは気が引けて……。頼んで持ってきてもらったんです」
「なるほど。ま、それもそうね」
 保彦は手に何も持っていないのに、忘れ物が何であるかは問うてこない。用件が分かればもう興味は失せたのだ。
 言い訳には好都合だが、あまりいい気はせずにいると、
「ま、忘れ物が見つかってよかったわね。……もう他には忘れ物ない?」
「え、ええ……」


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