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なりすました姦辱
【ファンタジー 官能小説】

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第一章 脅迫されたOL-9

 長々とした会話を流し読みしていくと、土橋が『あの動画がどうなってもいい?』という一言を発すると、リリは軽蔑の言葉を返すも、そこまでキレるなら既読無視をしたらいいだろうに、必ず返信している事に気づいた。
『あんたなんかと付き合えるわけないでしょ。顔見てモノ言って』
『なぜだい?』
 そりゃあ、お前が……、あ、今は俺か、ブサキモだからだろ。
 保彦はふき出しながら画面をスクロールさせた。
 土橋はリリを脅迫している。『動画』は恐らく、リリにとってアキレス腱なのだろう。土橋はそれを盾に恋人関係を強要しようとしていた。
 まぁ、どんなオバサンであれ、男を選ぶ権利はあるよな。
 土橋に言い寄られるリリを少し気の毒に思いつつ、読み進めた先にアップロードされた画像が現れた。
『今どんなカッコしてる? 写真送ってよ』
 その要求に『バカ』『キモい』『死んで』と拒絶のフキダシが並んでいたが、土橋が再び『動画をネット上に……』云々の旨を伝えると、観念して送られてきたものだった。
(えっ?)
 ピザを咀嚼していた顎が止まった。
 画像の女は、どう見ても保彦が想像していたオバサンではなかった。
 若い。首から上が切れているが、ジーンズに緩やかなニット姿、そんな服装でもかなりスタイルがいいことが窺えた。
 それだけで土橋は満足せず、前屈みに谷間を見せろと要求し、また押問答があったあと、オープンなニット襟の奥の暗みに、重力との調停を絶妙に図ったような、優美な谷間を写した画像が届いた。画像の上部に口元が見切れている。アップになった厚い唇と顎のラインが煽情的だ。
 そんな画像を送って来させながら、土橋はリリを懸命に口説いていた。どうやら彼氏がいるらしい。このレベルの女が、どう考えたって土橋に乗り換えるなどありえないのに、フキダシに綴られる口説きには、いかにもモテない中年らしかる必死さが炙り出ていた。
 リリは画像送信には応じながらも、交際の申し込みには全く取り合わず、『死んでもありえない』とまで言って拒絶していた。
 そこだけは頑なだった。当然だった。
 すると土橋はだんだんと、恋情よりも劣情が上回ってきた。彼氏と別れなくてもいいからセフレになろうと言い始めた。
 最低だ。結局ソコなのだ。色々ロマンティックな口説き文句を並べておきながら、とにかく若くキレイな女とヤリたいだけなのだ。
 保彦が感じたのと同じ軽蔑を言葉にして、もちろんリリは拒絶していた。土橋は恋心がすっかりなりを密め、『動画』を盾として露骨にリリへ肉体関係を迫る。
 ピザは一番小さなサイズにしたが、一人で食べきれるものではなかった。何切れかを残してボール紙の容器を閉じ、啜り音を立ててドリンクを飲み切ると、両手をワイシャツの脇で拭いた。自分の服なら絶対嫌だが、メッセージ履歴から土橋の賎劣さを思い知るにつけ、こんな奴の体、大事に扱わなくてもいいやという気分になっていた。
 ふとノートパソコンが見えた。電源を入れてみる。ログインパスワードは設定されていなかった。
(動画、か……)
 土橋にはとても手が出なさそうな女であるリリに対し、ここまで強気に迫れる動画に興味が湧いてきた。きっとこのパソコンのどこかにある。リリがやってくるまで、あるいはその前に土橋がこの部屋に辿り着くまでの暇つぶしに探してみることにした。
 クラウドストレージサービスのアプリがインストールされており、タスクトレイのアイコンをダブルクリックするだけで、苦労なく『女神アスカたん』というフォルダが現れて保彦を失笑させた。
 フォルダ配下には、年月日毎に動画ファイルが作成されていた。一番古いものは半年ほど前のものだった。無作為に選んだ動画をダブルクリックするとプレイヤーが起動する。
 今まさに保彦が操作しているパソコンが画面に映った。ウインドウが開いていて、大半を占める表示エリアにウェブカメラによるキャミソール姿のバストアップの女が映っていた。顔は口元だけ映っている。さっきアプリに送られていた写真の口元と同じ。アスカとはつまり、リリのことだ。
 画面右側には『アスカさんとチャット中』と表示されており、その下には『保有ポイント』と称した数字が添えられていた。
「ア、アスカちゃんは今日何してたの?」
「んー? 今日はお仕事して、帰りにちょっとデパート寄って帰ってきただけです」
「デ、デートとかじゃないのぉ?」
「だからカレシいないって、言ってるじゃないですかぁ」
「アスカちゃん、み、みたいな子が、カ、カレシいないなんて、とても信じられないなあ……」
 女が口元を緩めて答えると、土橋は緊張と興奮に引きつった気色悪い笑み混じりに、「お、俺の近くにアスカちゃんみたいな子がいたら、俺だた……だったら、絶対ほっか、ほ、ほっと、かないもん」
 言い慣れないことを言うから噛んでいる。
 女が土橋に真実を語っていないことは明らかだった。気づかないほうがどうかしている。
「もー、そんなこと言ってー。私が本気にしたらどうするんですかぁ?」


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