投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

水晶玉の告白
【SM 官能小説】

水晶玉の告白の最初へ 水晶玉の告白 2 水晶玉の告白 4 水晶玉の告白の最後へ

水晶玉の告白-3

わたしが住んでいるマンションから見わたす街並みは、すでに夏の涼しげな夕闇に包まれてい
る。昼下がりにシャワーを浴びたままいつのまにか寝込んでしまったようだった。今夜もまた
あの男の夢を見てしまった。

わたしが「アロマ・セリーヌ」という男性専用の高級エステサロンで、ボディセラピストの
仕事を始めてから三年近くになる。早いもので今年、わたしは四十歳になる。これまでわたし
は自分の客の夢を見ることなどなかったが、あの男の夢を見たときは、いつも芳醇な火照りを
からだの奥に感じた。

携帯電話が着信を知らせるメッセージを表示していた。相手は友人の「谷 舞子」さんからだ
った。今夜は、十数年前、SMクラブでいっしょに女王様をやっていた舞子さんと久しぶりに
会うことになっている。

彼女はわたしと同じ歳の四十歳。当時のSMクラブ仲間では特に親しい関係だった。わたしは、
その頃はまだ新米の女王様だったため、言葉や鞭の使い方など女王様としての振舞うための
いろいろなことを舞子さんから教わったのだが、彼女がクラブをやめて結婚したのを機に連絡
を取り合うことがなくなった。

ところが、偶然にも彼女が書いたネットの投稿小説を目にすることがあり、彼女に連絡をした
のだった。わたしがセラピストの仕事をしていることを告げると驚いた様子だった。鞭を手に
した女王様が、男性の癒しのために正反対のことをしているのだから彼女が驚くのもあたりま
えのことかもしれない。相手に与える癒しと苦痛は同じことだわ、とわたしが言うと舞子さん
は電話の先で小さく笑っていた。


いつのまにかマンションの外が暗くなり、淡い紫色を含んだ夜空には、砕いたビードロの破片
のような星が散りばめられている。砕かれた破片の光はやがて束となり、ひとつの球体となる。
それはあの男が手をかざした水晶玉に似ていた。水晶玉の光は、わたしのすべてを見透かし、
からだの奥にとらえどころのない微熱を孕ませる。

ボディセラピスト…わたしは、自分がなぜこんな仕事を始めたのかよくわからない。SMクラ
ブをやめたあと仕事を転々としていたが知人の紹介でエステサロンに勤めるようになった。
最近、気のせいか腕が少しばかり太くなった気がするが、わたしは特に身体や腕の力を使った
揉みほぐしや指圧というわけではなく、男性の体のツボを心地よく撫であげ癒していく施術を
おこなっていた。

店の客は高額な会費を支払うことができる信用のある会員に限られていた。理由はケア以上の
からだの関係にも応じることもあるということだ。ケアを終えた客はセラピストに対して、
オプションRと呼ばれるセックスの申し出ができる。わたしはからだを売ったつもりもなく、
セックスそのものを好んでいたわけでもない。

わたしは、ほんとうは不感症なのかもしれないと思うことがある。男のものを受け入れたとき、
わたしのからだは饒舌な収縮を始めるのに、わたしはこれまで交わった男に対して心からオー
ガズムを感じたことがなかった。ただ、自分の肉体の存在だけを確かめるためにだけ男に抱か
れたと言ってもよかった。。恋することにも愛することにも意味を見出せず、ただ無為の独り
歩きをはじめる自らの性を他人のように遠くで見つめるだけだった。

男に弄られた突起は膿み、男のものを受け入れた肉襞は湿り、熱を帯びるというのに、わたし
の心はいつもからからに渇ききっていった。わたしは、ただ、わたしの手で癒された男に抱か
れることが心地よかっただけだ。いや、逆に男たちは自らを癒してくれた女を抱くことに欲情
するものだと初めて知ったような気がする。充たされた男たちは、わたしとのセックスがとて
もよかったと言いながら数万円のお金を残していく。



水晶玉の告白の最初へ 水晶玉の告白 2 水晶玉の告白 4 水晶玉の告白の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前