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追憶のアネモネ
【その他 官能小説】

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JK(前編)-3

僕は元の席に戻り、軽食と読書でそれなりに寛いだ。

けれども僕はのちに気づいた。

店を出る時に僕の背中を追ってきた、いたたまれないほど真っ直ぐな彼女の視線を。

それにしても意外だったな、と僕は奄美梨花という生徒について思いをあらためる。

優等生ではないにしても、悪い遊びをするようなタイプには見えなかったし、少なくとも学校にいる時の彼女の態度とはまるで違っていた。

良い意味で期待を裏切られた、とでも言うべきか。

文化祭のあった先月の出来事が鮮明によみがえる。

僕が親しくさせてもらっている先生たちと連れ立って、一年A組の教室をおとずれた時だった。

そこで催されていたのはいわゆる「お化け屋敷」で、幽霊に扮した女子生徒たちが襲ってきたり、ダンスを披露したり、時には特殊メークをしてくれるというものだった。

女子校ならではの危うい雰囲気にも包まれ、アプローチを仕掛けてくる生徒も中にはいたのだが、ただ一人、奄美梨花だけはあからさまに僕のことを避けていた。

こちらから話しかけると、怯えた目をしてほかのクラスメートの陰に隠れてしまうのだ。

僕だって別に彼女とべたべたくっつきたかったわけじゃない。

ほんの少しだけ距離が縮まればいいかな、みたいな感じの下心を忍ばせていたに過ぎない。

それだけにあの洋菓子店での奄美梨花が信じられない。

ひょっとして僕に気があるのかな、とさえ思えた。

いやまさか、あの子に限ってそんなことは有り得ない。

なぜなら僕らは恋愛対象にならないくらい年齢が離れているのだから。

それからしばらく、僕は奄美梨花のことを考えながら寒空の下を歩いた。

「行かないで……」

あの時に聞こえた声は、ほんとうに空耳だったのだろうか。

それとも一人の少女の救いを求める心からの叫びか。

「考え過ぎだな、うん、考え過ぎだ」

この独り言が耳に障ったのか、道行く人が変な目で僕のことを見ていく。

確かに、今日の僕はどこか変だ。

今日に限らずいつも変だけど──そんなふうにおどけているうちに公園のそばに差し掛かった。

小さな噴水の周囲にベンチが点々と並ぶ、どこにでもあるような公園だ。

十二月ということもあり、さすがに人の姿はまばらだった。

不意に後ろのほうから自転車の車輪の音が迫ってきたので、僕は車道の反対側に避けてやり過ごした。

防寒対策をした青年の背中が遠ざかっていくのを見届け、ふたたび振り返る。


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