投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

恋のMEMORYの最初へ 恋のMEMORY 247 恋のMEMORY 249 恋のMEMORYの最後へ

両方好き-1

日もすっかりと暮れ、眩い満月がもう夜だよ…と伝えているように見えた。

「御免ね、態々駅まで送ってくれて。」
「何言ってんだよ、俺がそうしたいだけだよ!」

休みを利用し僕は佐伯君の居る青森まで向かったのだ。正直小遣いは少ない方だけど、パン屋でアルバイトをし今後の若葉ちゃんとのデート費用、そして彼との旅行兼青森までの移動費を稼ぐ為せっせこと頑張って働いた。

パン屋とってもお似合い…そう若葉ちゃんに言われ始めたら割とお客さんにモテた、接客で笑顔で挨拶…普通の業務を行っただけなのに、あっと言う間に看板娘、いや息子か。

働いてお金を稼ぐのは大変な事、それでも若葉ちゃんとデートをする事を考えると嫌な気分も吹っ飛ぶ、それに佐伯君とだって彼は元気にしているのか?幸せに過ごしているのか?また太陽のように素敵な笑顔が見たい、大好きな彼ともう一度会いたい、彼と過ごしたい…その事ばかり考えていたので苦労はあまりなかった。

「今日は本当に楽しかったよ、ありがとうね佐伯君。」
「それはこっちの台詞だよ、お前から誘われてから楽しみで仕方がなかったぜ。」

この日は二人で色んな所を回った、美味しいものを食べたり、水族館や美術館へ行ったり
温泉にも入った。

「まさか、旅館で一泊するとはな。」
「うん!だって君と見たい所が一杯あって。」

最初は日帰りの予定だったのだけれど興味の湧く観光名所が沢山あって、そしたら佐伯君が安い旅館を紹介してくれて。

「君のお陰で満足の行く旅行になれたよ。」
「良かった、そう言ってもらえて。」

彼と温泉で背中こすりっこしたり、旅館で夜眠れないからって将来の事やお互いの生活について語ったり。

「でも良かったよ、元気そうで。」
「あぁ、こっちも良かったよ、お前の笑った顔が見れて。」

…少し照れるな、でも嬉しい。

「俺はいつか真彩と結婚する、そして新しい家庭を作り、世話になった兄貴達に恩返しがしたい。」
「偉いなぁー、でもそれでも色々と大変だよね。」
「あぁ一言で言ってもそう簡単な事じゃないからな。」

僕はその台詞を待っていて、カバンから一枚の封筒を彼に手渡す。

「何だよこれ。」
「開けてみて。」

首を傾げ中を開ける、そして中に入っている物が何なのかを理解し目を丸くする。

「お、おいっ!これ!」

3枚の1万円札を驚いて僕に突きつける。

「…頑張って貯めたんだ、君が将来幸せになれるようにと思って少ないけど。」
「ばっバカ野郎っ!そんな金、受け取れる訳ねーだろっ!」
「ううんっ!受け取ってよ!…君には幸せになって欲しいんだっ!」
「風馬……。」

僕は彼の事が大好きだ、だから人並み、いやそれ以上に幸せな未来を送って欲しい。

「だから、お願いだよ…。」
「風馬…。」

僕の熱意が伝わり彼はそれをカバンに入れた。

「…ありがとう、お前…ほんっとうに良い奴だな、親友になれて良かった。」
「君に落ち込んだ顔や怒った顔は似合わない、ずっと笑っていてよ。」
「あぁ!」

僕たちは離れてもずっと親友だ。

「所でお前、結局柊さんと別れなかったんだってな、蓮から聞いたよ。」
「うん!最初は別れる事を覚悟してたけど、でもやっぱり。」
「…その方が良い、絶対に。」

そうだ、彼は一度経験しているんだ、嘗て愛した柊さんと生活の為、やも得ず。

「…良かったな、風馬。」
「うん!」

電車が来るアナウンスが鳴り振り向く僕ら。

「じゃ僕はこれで、今日は本当に楽しかったよありがとうね。」
「……。」

返答はなく、そのまま彼に背を向ける、すると。

「!!」

後ろから奮い立たせるように背後から強く僕を抱きしめる。

「佐伯、君?」
「風馬っ!絶対幸せになれよっ!」
「……。」

腕を離してもらい、改めて正面から抱き合う。

「うん!君も…。」
「あぁ勿論だ!これからも5年10年後だってずっとずっと親友だ!」
「…僕、君に出会えて本当に良かった!」

お互い揃って涙目を浮かべる、恐らく今後会うこともないのでそれ故に。


恋のMEMORYの最初へ 恋のMEMORY 247 恋のMEMORY 249 恋のMEMORYの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前