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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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齋藤春宮の悩み 〜想い、花開く〜-12

 つまり……輝里は、秋葉への上へ馬乗りになっていた。
 この状況が輝里の本意でない事は、先述した戸惑っている表情からも分かる。
 だが上からどかないのは、秋葉の手が腰に添えられているからだった。
 はてどうしてこんな事になったのかと、秋葉は思考を巡らせる。
 ――全国大会の予選で地区随一の強豪チームとぶち当たった秋葉チームは奮闘敵わず強豪チームに敗れ、秋葉を始めとする三年生は大会への夢を見る事ができなくなっていた。
 落ち込む秋葉を励まそうとでもいうのか、ある時輝里が自宅デートに誘ってくれたのである。
 自分の部屋に入れた事はあるが輝里の部屋に入った事のない秋葉はそれを承諾し、本日それが実現した。
 アルバムなぞめくって中学時代の輝里を知るうち、秋葉はアルバムに挟まれていた封筒を見付けたのである。
 好奇心から開封しようとした秋葉を、輝里は必死で止めた。
 封筒の中身は中学時代に告白できず終いだった相手へのラブレターだったから、秋葉に見せられる訳がない。
 こんな所に紛れ込んでいたのも忘れていたのだから、なんでそんなモノをこんな場所にと輝里を責めるのは、酷というものである。
 そんな訳で必死な輝里が一体何を隠したがっているのかと好奇心をそそられた秋葉は、輝里の妨害を何とかいなして読んでみたいと思ったのだが……その時、視界が反転した。
 どうやらバランスを崩してひっくり返ったらしいのだが……お腹の重みが気になる。
 ふと見ると、手を伸ばした輝里がお腹に乗っかっていた。
 どうやらバランスを崩した際にもつれ合ったようで……そして、今に至る。
 振り返れば振り返る程、こんな状況に追い込まれたのは自分の責任らしい。
「秋葉……」
 ごくりっ、と輝里の喉が動いた。
 自分から積極的に動かなければ、なかなか手を出してくれない男。
 だけどそれでも、大好きな男。
「……いい?」
 秋葉が何をと問い返す前に、輝里は体を前に倒す。
 ちょうど、唇と唇がぶつかるように。
「……剃り残し……」
 唇を離した輝里は、眉をしかめて秋葉の顎を撫でた。
 少しばかり伸びたヒゲが、輝里の顎をじょりじょり擦ったらしい。
「あ、悪い……」
 自分の顎をさすった秋葉は、ヒゲの剃り残しを発見して反省する。
 ヒゲに意識を転じさせて秋葉が動転するのを防いだ輝里は、さてこれからどうしようかと頭を悩ませた。
「きゃあっ!?」
 秋葉の手が急に動いたため、輝里は思わず悲鳴を上げる。
「ご、ごめっ……」
 手を離そうとして勢いが余り、輝里の腰を間違えて撫でてしまった秋葉は、慌てて謝った。
 秋葉ともっともっと仲良くなりたい輝里としては、謝らないでこのまま抱き締めるくらいの大胆さが欲しい。
 たまには、秋葉の方からキスして欲しい。
 ――輝里がねだらないとなかなかアクションを起こしてくれない秋葉だが、今日は勇気を出す事にしたようである。
 余っていた手を輝里の背に回し、体を引き寄せた。
 ぱふっ、と輝里は秋葉の上に倒れる。
「あ……秋葉?」
 珍しいアクションに狼狽した輝里は、慌てて体を起こそうとした。
 だが背中へ秋葉の手が回り、輝里の動きを封じてしまう。
 結果として輝里は秋葉に体を密着させたまま、目を白黒させていた。
「……いいか?」
 秋葉の問いは、輝里の頬を真っ赤に染めさせる。
「……うん」


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