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せいざめい
【エッセイ/詩 その他小説】

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「おい、また この手の話かよ」-2

大阪市立電気科学館を父と妹とで見学した時、たまたまプラネタリウムで南の国の星空が投影された。
空高くに映し出された星座名を見て、心が激しく動いた。

じ う じ か

『みなみじゅうじ』座のことだ。だけど、電気科学館のプラネタリウムは1930年代に作られたものだから、当時の日本の仮名づかいが使われていたんだ。(学名は添えられていなかった)

え、他の星座はどうなんだどうなんだ と思いながら、なかなか電気科学館を訪ねる機会はなく、ようやく訪ねられたのは閉館寸前になってからだった。
星座名が映し出されると、目の前がクラクラした。

お ほ く ま
を  と  め
へ び つ か ひ
は く て う

想像以上の『旧仮名づかい』だった。プラネタリウムという異国で作られた科学機械の中に、「和の心」がひそんでいた。

閉館直前にもう一度電気科学館を訪ねる時間ができた。
プラネタリウムのドームをうめた、いわゆる「おなごり」の来館者の中で、いよいよ星座名が投影された時、身体が硬直してしまった。

ヒ  ド  ラ

……「みずへび座(Hydrus)」だったらしい。この当時はそう呼んでいたのだろうか。
この、自分の目の前を横切る不気味な星座名に心を奪われて、他のを確認する気を失ってしまった。
電気科学館は閉館されて、新しい科学館にはすごいプラネタリウムが設置されている。
おかげで「ぼうえんきょう」座は「ばうゑんきやう」と書かれていたのかどうか、自分の目で確かめることは もう出来そうにない。


(△)
そういえば電気科学館のプラネタリウムは、あの漫画の神様が少年時代、投影の内容がかわるたびに見に行かれたと聞く。
投影される星座名をどのくらい意識されてたかはわからないが、いい歳してた自分でさえ あの夜空に浮かぶ「ヒドラ」の三文字にやられてしまったんだ。
漫画の神様にも、何かの衝撃があったのではと勝手に妄想している。

《おしまい》


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