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アダルトビデオの向こう側
【熟女/人妻 官能小説】

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4.セックス・セラピスト-6

 ケンジとミカと海山和代が話し合って出した処置の方法をミカが説明することになった。
 クライアントの春人と春美がテーブルをはさんでミカと相対して座った。

「説明するよ」
 ミカが口を開いた。
「春美さんは春人君とのセックスの時に、苦痛を感じているよね? いつも」
 春美は小さくうなずいた。
「何がいけないんでしょうか……」春人は泣きそうな顔でミカに身を乗り出した。
「二人がともに気持ちいいと感じるセックスのセオリーを春人君にわかってもらって、同時に春美さんの性感帯の分布傾向を知るために、ケンジを使うけど、いいかな?」
「ケンジさんを?」
「もちろんあなたたち、特に春人君の許可がなければ実行には移さない。つまり、春美さんをケンジが抱いて、実際にセックスしてそれを春人君に見てもらって、同時にケンジは春美さんの性感帯を調べる、ってことよ」
「是非!」春人は思わず立ち上がって叫んだ。「春美がケンジさんに気持ちよくしてもらえるなんて光栄です!」
 ミカはちょっと呆れたように春人を見上げた。「座って、春人君」
「で、春美さんはどう?」
「あのあこがれの『セックス・マスター』ケンジさんに抱かれるなんて……」
 春美は目に涙を浮かべていた。
「その後春人君には根本的な女性の扱い方を知ってもらうために、あたしとセックスしてもらう」
 ぶっ!
 春人がいきなり自分の鼻を両手で押さえた。指の隙間から血が垂れ始めた。ミカは黙ってテーブルにティッシュの箱を置いた。
「すびばせん……」
 春人は慌ててティッシュを取り出して、鼻に詰めた。

 ケンジとミカはこの熱い仕事を始めてから、今までに5本のセックス指南のための『How to Sexシリーズ』のDVDを制作していた。それはケンジとミカのモデル並みの美しい身体としなやかな動き、それにツボを的確に押さえ、なおかつ極めて官能的でありながら下品さの全くない絶妙のカメラワークによる芸術的とも言える作品で、春人たちのようにセックスがうまくいかずに悩むカップルのバイブルのようなアイテムだった。そしてそれは『海棠アミューズメント・プラザ』での販売にとどまらず、ネット上でも紹介され、通信販売によって全国にかなりの数のファンを獲得していた。

「春人君は観たことがあるの? あたしたちのDVD」
「はい。全巻持ってます。ケンジさんもミカさんもすっごくかっこよくて美しくて、俺、週一で観て抜いてます」
「抜くな」ミカは少し頬を赤くして上目遣いに春人を睨んで続けた。「そんなに何度も見てるんだったらだいたいのやり方はわかるはずだろ? なんであんな独りよがりのセックスしかできないのかな」
「あまりに世界が違いすぎて……」
 ミカは遠慮なくため息をついた。

「じゃあ、今後の計画を」
 ミカはそう言って二人の前に日程表を置いた。
「春美さん、生理はあった?」
「はい。先週」
「ちゃんと薬は飲んでる?」
「はい。和代先生に言われた通りに毎日」
「そう」
 ミカは微笑んだ。
「ケンジさんが春美を抱く時はゴム着用なんでしょ? どうしてピルを?」
「あのね、春人君、コンドームを使ったセックスでも、妊娠率は3l。つまり100回に3回は避妊に失敗するってこと」
「はあ……」
「このセラピーは当然妊娠が目的じゃないから、完全に避妊する必要があるわけよ。わかる?」
「ピルってそんなに妊娠率が低いんですか?」
「0.1l。さらにコンドームを併用することで、ほぼ完全に避妊できるってことね」
「なるほど……」
「それから、」ミカは背後のレターケースから二枚の診断書を取り出して二人の前に置いた。「念のために言っとくけど、ケンジもあたしも二週間に一回診察を受けて、感染症の検査をしてもらってるの。これがその最新の診断書。ほんの5日前のヤツ」
「なかなか厳格ですね……」
「当然よ。あなたたちクライアントを不安にさせるようじゃセラピストとは言えないでしょ」
「恐れ入りました」
 春人は頭を下げた。

 ミカは指を立てて言った。
「一つお願い。三日後までに春人君、春美さんがそれぞれいつも使っているソープとシャンプー、トリートメントの類いと同じものを揃えて持ってきて」
「石けんとかシャンプーとかを何に使うんですか?」
「あなたたちがセックスする時は、たいていお風呂上がりでしょ? その時の身体の匂いに近づけるためよ。あたしたちがそれを一週間使用して、できるだけ二人の匂いを再現してあなたたちの相手をするってわけ」
「おお、なるほど」
「そしてまず春美さんがケンジとベッドインするのが今から二週間後。この水曜日の夜8時でいい?」
 ミカがカレンダーを指さしながら言った。
「空けます」
「それからその翌日の木曜日が春人君とあたし。同じく夜8時。OK?」
「よろしくお願いします」
「二日とも夕方5時に二人でオフィスに来られる?」
「大丈夫です。この予定を最優先しますから」
「そう」
 ミカはにっこり笑った。
「来たら四人でここのレストランで食事をして、シャワーを済ませてセラピー・ルーム入り」
「わかりました」


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