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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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愛おしい彼-1

「うーん、今日も賑わってるわぁー。」
「そ、そうだね…。」

私は彼、風馬君を誘い地元の市民温水プール場へ足を運んだ。

休日、そして暑い夏に涼を求めこの日も沢山の客が水を愉しんでいる、とはいえ私達は
遊びに…まぁそれも半分あるけど目的は他にある。

「風馬君、本当に良いの?」
「う、うん…僕頑張る。」

実はこの風馬君、何を隠そうカナズチなのである。小学生の頃夏休みに私と風馬君の両家
で旅行に行き、そこでラフティングを体験したのだけれども川の流れが速くボードが激しく揺れ、彼がその勢いで川に落下してしまい、安全用のスーツを着衣していたので大事に
はならなかったけれども。

「あれから旅行先のプールでも「溺れるの嫌だぁー、水こわぁーい」って一人部屋で引き籠ってたもんねっ。」
「んもぅー、またそうやって昔の話ひっぱるぅー。」
「あっははっ、じゃー早速特訓しましょうかっ!」

そう言って暗く床に視線を落とす彼を競泳プールまで引率する。

もうすっかり風馬君が彼氏と言うのが板に着き、付き合い当初に感じた違和感も消えて。
生き生きと目的地へ足を運んでいると、チクチクと視線を感じ振り向くと。

「何?」
「あっ、いやその。」

ジロジロと私の水着姿を見つめる彼。それから私が声を掛けると同時に我に返るように
バツ悪そうに顔を強張らせ首を横に向け、顔を赤くし腕で自分の顔を隠そうとする。

プールでのデート前日、私は巴ちゃんと一緒に水着選びをした、その際に悪戯好きの
巴ちゃんが「彼がドキドキするようなセクシーなモンにしたら?」と言い、穏やかな私に
しては少し大胆な水着を勧めてきて、最初はそんなの断って大人しめで可愛らしい水着を
選んだのだけれども…「見たくないの?自分の水着にドキドキする彼を」そう言われ私は
ちょっと躊躇いはあったけれど勇気を持って彼女の勧める少し胸が出過ぎの水着にし。

「ど、どうっ?」
「……。」

問いには答えず、ひたすら膠着する彼。それから彼が来ていたパーカーを突然私の体に
包み隠すように着せてきて。

「えっ?何?」
「ちょっと…。」
「御免なさい、派手過ぎた?」
「あっいやその…、ちょっと恥ずかしいなぁーって。」

他の人ならいざ知れず、自分の彼女がこういう恰好をしてると戸惑う…、巴ちゃんとの
水着選びの時に聞いた話。

彼氏らしい彼、風馬君も男の子だったんだ…。

「私、ちょっと着替えてくる、派手過ぎるし可愛いのもう一着予備で持ってきたから。」
「いっ、良いよ着替えなくてもっ!」
「でも…。」

顔は未だ赤く染まったまま、更衣室へ行こうとする私の腕を掴み引き止める。

「可愛い!とっても可愛いよっ!」
「っ!風馬、君。」

直球に言われたその言葉、素直に嬉しい。

「さっ、練習しよっか!」
「えっ、えぇ。」

改めて競泳プールへ行く私達。

ふふ、本当に可愛いなぁー風馬君は。



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