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特命捜査対策室長 上原若菜
【レイプ 官能小説】

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謀反-6

 (私、助かったんだ…)
呆然としながらそう思った。安堵感が生まれた瞬間、地獄に落ちる寸前であった自分の状況に、急に恐怖に包まれた。震えが止まらない。涙があふれ出来た。
 「大丈夫っすか!?」
吉川は屈んでさとみの肩に手を当てる。
 「…!」
さとみはとっさに吉川に抱き着いた。
 「怖かった…怖かったよぅ…!」
さとみはまるで子供のみように泣いた。
 「もう平気っすよ。」
背中を擦り介抱する。震える体が痛ましかった。どうやらレイプだけは避けられたようだ。吉川は安心した。さとみではなくてももう傷つく女を見るのは嫌だ。最悪の事態を免れた事で大きく息を吐いた瞬間、頭から何かを落とされたかのような衝撃に襲われた。
 「ぐっ…!」
吉川がいきなり苦しみ出した。
 「えっ…?」
尋常ではない苦しみ方にどこか怪我したのかと心配になるさとみ。
 「ど、どうしたの…?」
うずくまる吉川に自分の恐怖がスッと消えてしまった俯き苦しむ吉川を心配する。
 「な、何でもない…」
 「何でもなくないじゃない…、ねぇ…大丈夫??」
 「ハァハァ…、くっ…!」
 「ねぇ…」
そう言って吉川の顔を覗き込んださとみは吉川の表情を見て驚いた。
 「ヒッ…!」
何故なら鬼が致命的な傷を負い、その痛みに憎しみを抱いているかのような物凄い形相であったからだ。
 「平気だ…、平気だから一人にしてくれ…」
 「へ、平気には見えないよ…」
 「頼む!一人にしてくれ!!」
言葉も荒々しくなって来た。吉川を心配してと言うより、怖くてさとみは動けなかった。吉川は苦しみながら何とか落ちつこうと息を整える。
 「覚醒剤の禁断症状だ…。」
 「か、覚醒剤…!?」
 「ああ、捜査の過程で仕方なかったんだ。じき収まる。たから一人にしてくれ…。自分が見えなくなるんだ。あんたを傷つけるかも知れない…。目の前におぞましい虫が見える…。いや、体中に虫がたかってる。いや、血管の中を虫が蠢いてる!頭がおかしくなりそうだ!ぐっ…、クソっ!!」
頭を掻き毟る吉川。
 「頼む、こんな姿を誰にも見られたくないんだ。だから一人にしてくれ…、頼むから…」
薬物症状を目の当たりにするのは初めてだ。もはやいつもの吉川でなければさっき助けてくれた吉川でもなかった。いつも毛嫌いしていた吉川が、何故か心配で心配で仕方ない。心境の変化の理由など考えている余裕はなかった。気付けばさとみは苦しむ吉川を見て無意識にそっと抱きしめた。
 「守ってあげる…。虫から守ってあげる…。戦ってあげる。一緒に…。一人で苦しまないで…?私がついてる…」
自分でも信じられない言葉であった。何故だか分からない。説明はつかない行動であった。
 「アンタ…」
意外な行動に吉川も戸惑った。しかしさとみに抱きしめられた体は心地良さを感じた。吉川はフッと目を閉じる。頭の中に蠢く物は虫なのか、もっとえげつない物なのかは分からない。しかしさとみの温もりに不思議と力が抜ける。そして体から虫が一匹ずつ消えていくような気がした。長く苦しんで来た禁断症状がこうしてすぐに落ち着いて行った事はなかった。吉川の息は徐々に落ち着き始め、どのぐらいの時間が経ったのかは分からないが、苦しみを理解してくれる人間の存在の大きさを感じ、やがて体の中から虫が完全にいなくなった。
 吉川の表情から苦しみが消え、最後に大きく息を吐いた吉川は、今まで聞いた事のないようなさとみの優しさに溢れた声を聞いた。
 「ありがとう…。」
禁断症状が収まり脱力感に被われた吉川に、その言葉はまるで命を吹き込む魔法のように心に響いたのであった。


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