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ラブプレイ〜Hな二人の純愛ライフ〜
【フェチ/マニア 官能小説】

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真夜中の逢瀬-2


「…じゃあ、光の君が藤壺の腕を掴まえて迫るシーンからいくから」

台本を片手で持ったまま、俺はそう言って緩く一呼吸吐く。

そして顔を上げた。

「……──」

「……?…何してんの?もう始まってるよ?」

「あ、ごめんっ…急に聖夜の顔付きが変わったから……」

「………」

舞花のこの一言にため息が出た。

役者なら、現場に入れば監督の合図一つで当たり前のように役に入り為りきらなければイケナイ。

せっかく与えられたヒロイン役を“やってやろう!”──

そんな気迫が舞花からは窺えなかった。


「現場に入ったら、間違っても今みたいな発言しない方がいいよ、総スカンくらうから…」

事務所の先輩として、なんか色んな尻拭いが回ってきそうな気がする…

「じゃあ、もう一回やるからこれでやる気見えなかったら稽古は終わりにする」

「わかった…」

舞花は少し落ち込んだ顔を覗かせた。




役者として俺に稽古を頼んだ以上──

甘えは許さない。

俺は芝居に関しては鬼だから…。

スキャンダル用のでっち上げ恋人の甘々なままだと思ってるなら大きな間違いだってことを叩き込んでやる。


そんな意地悪な気持ちがふと沸いていた。

「シーン7からね」

再び光の君に為りきる。

目の前には幼き頃に亡くした大好きな母君、桐壺に生き写しの藤壺…

そして我が父君の後妻…

血の繋がりのない若き義母──

亡くした実母の影を重ね慕い続けた思い。そんな光の君の純真な心はある日を境にして少年だった光の君を男に変えた──


離れに偲び込み蝋燭の灯りが漏れる簾(すだれ)の隙間から覗いた父と母の蓐(しとね)…

絡み合う男と女の情交──

それは光の君にとっても鮮烈な光景だった──



母として慕っていた藤壺をいつしか一人の女として見るようになった光の君。


そして…

男の目で自分を追い始めた義理の息子に気付いていた藤壺──



禁断の

逢瀬の始まり



艶やかな夜の幕開けだ…



「……母上…なぜわたしを避けるのですか…」


藤色の衣を翻し、顔を見るなり身を返した母の細腕を絡めとり捕まえた…



朧気に雲が游ぎ、綺麗に欠けた月を霞めていく晩。

光の君は腕の中に捕えた母、藤壺を真っ直ぐに見つめた──。

「……あ…、…」

「………──」


俺は捕らえていた舞花の手を離した。

「全然ダメ…話にならないよそれじゃ──」

「──……ごめ、なさ…」

「義理の息子に迫られてんだから思いっきり戸惑わないと禁断の妖しさが伝わらないよ?」



俺に惚れてるのはわかるけど…


藤壺としての表情から“好き”がだだ漏れだ…



俺は溜め息をついた。

「俺と稽古するまえにイメージトレーニングでもした方がいいよ?監督と話し合って、どんなイメージの藤壺を求めてるのか、脚本も読み込んでね…」

俺は帰り支度をしながら舞花を振り返らずに上着を羽織る。

「じゃないと、この役、無理──役者辞めた方がいいよ」

これは本音だ。そうじゃなきゃ本人がこの先泣くことになる──

グラビアだけやって潔く身を引いた方が舞花の為になるのに、なんで女優なんか目指させたんだあの髭チンピラは?


俺にとってかなりでかい疑問だった──

「明日は翌日に控えたクランクインの宣伝だよ?撮影に入ったら後には引けないから気を引き締めないと、同じ事務所の風間さんにも迷惑がかかる…わかってるよね?」

「……っ…」

「風間さんとも濡れ場があるんだから稽古付けてもらうといい。──俺とはその後だね…」

「──…っ待って聖夜!」

事務所を出ようとした俺を舞花が止めた。



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