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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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相手の幸福を本気で願うという事…-4

「そうなんですか、昴さんようやく…。」
「えぇ、やっとよ…もう待ちくたびれたわ。」

自室でゆっくりとし、ケータイを耳に付け、立ちながら一之瀬さんと通話する。青森での
旅行の時にメアドを交換した私達。

どうやら一之瀬さんの婚約者で佐伯君の兄である昴さんがようやく彼女にプロポーズを
してくれたそうだ。

仕事帰りに職場まで車で出迎えてくれて、そのまま夜のレストランへ向かい、最初はただ
いつものように食事に誘ってくれたダケ、くらいに思っていたのだけれど食後に家に帰る前に渡したい物がある、といつになく真剣な表情を構え、何かと思い彼女の前に差し出したのが結婚指輪、最初はそれが何か認識するのにちょっと時間が掛かったけど、後になってその意味を理解し、一気に衝撃が走り目を開き、両手で口を押え。

「待たせたね、僕たち…正式に夫婦になろうっ!」
「……はいっ!」

私にも世話になったとかで、というよりこの天にも昇る嬉しさを誰かに伝えたくて仕方ないのだろう、その気持ち何だかとても良く分かる。

「良かったですね、本当に…。」
「えぇ。」

声のトーンが言ってる事に比べ低い事に気づいた彼女。

「どうしたの?何だか元気ないけど。」
「えっ、分かります?」
「あたる君と何かあった?」
「…実は。」

彼女にも今の現状を打ち明けてみた。

「それで、私…彼を困らせてしまって。」
「なるほどねぇー、それは確かに複雑ね。」
「もう、自分でもどうしたら良いのか分からなくて…。」
「若葉、ちゃん。」

明るい未来が、想像出来ないよ。

「なるようになるわ。」
「えっ。」
「彼がそのまま貴女の所に残るのなら今まで通り、裕福ではない家庭の問題は貴女が全力で支えてあげれば良い、後は二人の時間をその分思いっきり楽しめばいいし、向こうに行くのならばお友達に力を貸してもらって彼の居ない寂しさをカバーして、メールや電話でも頻繁に、何だったらこの前みたいに青森にまた来ればいいだけの事、して後は彼が幸せであり、自分が言った事に間違いはないとしっかり前を向けば良い、安心してもし彼が
向こうに来るのなら私も昴さんも全力で彼の面倒を見るから。」
「一之瀬さん、…ありがとうございますっ!」
「あらあら、まだ行くって決断してないんでしょ?」

自身の失言に赤っ恥。

「でも、ちょっと投げやりかしら、他人事だと思ってメールや電話をすればいいとか。」
「そ、そんな事ないですっ!お陰で少し心がラクになりました。」
「ふふ、良かった…、じゃー私はそろそろ結婚式の準備もあるし、あーそうなれば今後は
一之瀬さんじゃなくて佐伯さん…うーん困ったわね。」
「なら優華さんですね。」
「そうね、更に言えば貴女があたる君を佐伯君…じゃなくてあたる君って呼べば。」

赤っ恥、セカンド。

「そ、それはまだ。」
「あらまぁ、話が長引きそうね、どうしてこうも女って喋りたがるんでしょうね、じゃ
結婚日が決まったら呼ぶから、じゃーね。」
「はい、…あ、あのっ!」
「?」
「ご結婚おめでとうございますっ!!」
「ありがとう。」

きっと彼女はこれから幸せな人生を歩むんだろうな、もし彼が青森へ行ったら二人の夫婦の間に水を差すのでは?佐伯君がそれに気づいてまた遠慮したら嫌だな、それでも彼を
受け入れるって、本当に良い人達。

ケータイを机に置き、ゆっくりとした足取りで窓側へ向かい、戸を開け夜空に浮かぶ満月を見上げる。

……

もしも、もし昴お兄さん達が青森ではなくこの北海道の札幌に居たら、もしも彼のお父さんがちゃんとした人物だったら…。

運命の悪戯って、残酷だな、神様は私にいや私達にどうして欲しいんでしょうか。

「神様の、バカ。」

次回、27話へ続く。


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