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「エースパイロットの危機」
【SF 官能小説】

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「エースパイロットの危機」-2

「通信妨害? いえ、通信ジャック!?」
 ケイがそう叫んだ時、そこに表示されたのは、オペレーターの暢気そうな顔ではなかった。三十前後の厳めしい顔つきの黒服の軍人である。連邦軍の軍服に黒いものは無い。黒い軍服は、エウロピア帝国陸軍の制服カラーであった。さらに軍人は金髪の髪を短めに刈った貴族風の顔立ちの白人であった。エウロピア人であるのは明らかだ。
「あ、貴方は!?」
「お初にお目にかかる。ケイ少佐。少官は帝国軍のクリーゲ大尉と申す」
 クリーゲはにやりと口元に笑みを作った。薄寒い印象を与える笑み。
 ケイはレーダーを見てぎょっとする。自分の機体のまわりに敵DOLE部隊が包囲するようにして現れていた。赤い光点が自分の機体を円形に囲んでいる。その数は十を超えていた。すべて敵の識別コードだった。
「エースパイロットとしての貴殿の活躍、我々も驚嘆とともに拝見させてもらっていた」
「それはどうも」
 いきなり総攻撃をせずに会話をしだす敵の意図がよくわからない。ケイはそう生返事をするしかなかった。その間、必死になって敵包囲網を突破する方法を考えていた。
(こうなったら、端から叩きつぶして、活路を見いだすしかないわね……)
 クリーゲはそんなケイの緊迫した表情を見ながら、口元に笑みを貼りつけている。しかし目は笑ってはいなかった。
「……しかし、いい加減、我が軍も損害を許容できなくなってきている。そこで少官が参謀本部に打診して君の捕獲作戦を実行に移すことになったのだよ。あいにく、こちらの電子戦技術は、君たち連邦軍よりも上だからね。機体さえ動かさなければ、このようにレーダーからの隠蔽は可能、というわけだ」
 大尉の余裕に満ちた笑みを睨みつけながら、ケイはじりじりと焦りを感じていた。
 すでにキャノビーからも敵の動きがわかるようになっている。帝国軍正式採用DOLE「ファッグ」。まるで濃緑色の鎧を着ているかのような外見をした巨人が、銃を構えつつ接近してくる。等間隔になりながら、ケイの機体を囲む輪を縮めていく。
「あいにくだけど、私は捕まるつもりなんてないわよ!」
 ケイは叫ぶとともに、左右の腕のレバーを同時に動かす。バリアントが主の意志を察してマシーンガンを構え、一番近づいていた敵機へ向ける。ケイはトリガーを引いた。三点バーストでの銃弾──というよりも、砲弾といったほうがいいかもしれない──がファッグへと降り注ぐ。腰の駆動系の中枢へと叩きつけられ、ファッグはがくりとうつ伏せに倒れた。
 大尉が命令するより前に、帝国軍のパイロット達は反撃を開始した。たちまちケイのもとへと銃弾の雨が降り注ぐ。
 だがその時にはすでにケイは飛翔を命じていた。バリアントは華麗な跳躍を行いつつ、縦横無尽に銃を下へと向けて狙撃していく。
 一機、また一機とファッグが倒れていった。たちまち包囲網が崩れる。
「ふん。こんな手で、この私を倒せると思ったの?」
 ケイがそう敵を見くびった時だった。
 包囲網のファッグの背後に鈍重そうな別の機体を視認した。両腕が二門の砲身となっていて、ぶっくりと太った機体である。視認しづらいように緑と茶のジャングル迷彩が塗られている。
 連邦軍がアーガスと名付けているその機体は、支援砲撃用の重DOLEだった。重砲では不可能な山岳地なども楽々と移動しつつ砲撃を行えるので、敵味方ともにこの手の支援砲撃用のDOLEも実戦で多用している。だが、軽量なDOLEと対戦したら、その鈍重な動きから獲物にされることも多い。
 敵からの通信は、その機体から流れてきていた。指揮官機としても使われているようだ。即座にケイは撃墜を決意するべく、銃口を向ける。
 その時になって、ようやくケイはその機体が通常のとは別の改造がなされていることに気づいた。
(なんなの……あれ……あの砲身は……)
 今までに見たことのないタイプだった。通常の砲身の代わりに銀色のパラボラアンテナのようなものが取り付けられている。それがケイのバリアントへと向けられていた。
「さて、ケイ少佐。お遊びはここまでにしよう。我が軍が開発した特殊兵器の威力を見て貰おうか」
 大尉の言葉が聞こえると同時に、その電子戦機はアンテナの照準をケイの機体──さらに下半身へと向け、電波を発した。透明なウェーブがケイのバリアントを包み込む。
 突如としてケイは股間に熱いものを感じた。
「……っ!? な、なに!?」
 ケイは戸惑いを感じる。自分の下半身が燃えるように……熱い。額から汗が滴り落ちる。計器類をとっさにチェックするものの異常は認められない。
(な、なんなの!? 機体はオールグリーン……ノーダメージのままなのに……)


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