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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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星司の帰国。そして…-8

「どうしてなんだよお、アニキが付いてて、どうしてなんだよお」

数年ぶりに再会した星司に向かって、雄一は叫びながら殴った。呆けた状態の星司は無抵抗に雄一から殴られるままだった。

倒れた星司に馬乗りになった雄一が、固く握った拳を降り下ろそうとした瞬間、それまで我慢していた陽子が泣きながら雄一の背中に飛び付いた。

「ごめんね。ごめんね。あたしが悪いの」

「どうしてー!姉ちゃんを守れなかったのはアニキだろうが!」

腕を振られ、払い退けられそうになったが、その腕に陽子はしがみついた。

「あの時、あたしが止めなかったから…」

それを聞いた雄一の手から力が抜けた。止めなかった責任は自分にもあった。正直、あの時、星司が迎えに来なければ、悠子はどうなっていたかわからない状態だった。各務家を捨てて、迎えに来てくれた星司に対して、心から感謝していたのも事実だった。

「くっ…ううっ…」

雄一は星司に馬乗りになったまま、拳を固く握って咽び泣いた。

その翌日から、雄一は悠子の遺影の前でぼんやりと過ごすことが多くなった。忌引の日数が過ぎても、勤めていた会社にも行かなくなっていた。

見かねた陽子は毎日のように顔を見せたが、塞ぎ込む雄一を中々立ち直らせることはできなかった。一月が経ち、思い余った陽子はその言葉を口にした。

「雄ちゃん、抱いてよ」

顔を上げた雄一の力の無い目が陽子を見つめた。

「何、バカなこと言ってんだよ…」

「あたし、バカだからどうしていいかわからないの。雄ちゃんが元気になるんだったら…」

陽子はそう言いながら、着ていたシャツのボタンを外し始めた。雄一はその陽子の手の動きを掴んで止めると、そのまま陽子を抱き締めた。

一瞬、雄一は陽子の誘いにすがろうと思ったが、寸前まで見ていた遺影の中の悠子の笑顔が、それを思い止まらせた。

オレは強くなるんだ!

小学生の雄一の声が自身の心の中を反芻した。父との別離に泣いていた子供の頃の悠子の背中を見ながら誓った言葉だ。

雄一は陽子の震える肩を抱きながら、いつまでも変わることのなくなった悠子の笑顔を見つめた。

姉ちゃん、心配かけてごめん…

雄一は心の中で謝ると、陽子にそこまで言わせた今の弱い自分を反省した。

「もう大丈夫。ありがとう…」

陽子の耳元に雄一の優しい囁きが聞こえた。

「雄ちゃん…」

雄一は陽子から離れると、スックと立ち上がった。

心配そうに見上げる陽子の視線と重なり、雄一は慌てて目線を反らした。

「さあ、明日から仕事でもするかな」

照れ笑いを浮かべた雄一が、腕をグルグル回しながら元気よくいった。

雄一を女の力で慰めようとした陽子だったが、結局関係を持つことなく、その気遣いが雄一を立ち直らせる切っ掛けになった。

翌日、仕事を探すと言った雄一に、陽子は父親の陽司に引きあわせた。こうして雄一は各務家の秘書となった。


「うふふ。本当に抱いて欲しかったのになあ」

雄一の照れ笑いを思い出した陽子は、楽しそうにひとり言を洩らした。

あの時、星司と雄一のことで気疲れをしていた陽子は、何もかも忘れたくなって、心底抱かれたいと思っていたからだ。

雄一に電話を切られたまま手に持っていたスマートフォン。陽子はそれを操作して、保存していた悠子の画像を開いた。もう変わることのない親友が笑っていた。

「悠子、幸田美咲が帰ってきてる。もう直ぐ全部終わるよ。それが終わったら…」

全部終わったら、お父さんの話を聞いてあげてもいいかな。と陽子はホンの少しだけ思った。

「でも、こんなふしだらな女は嫌かな…」

陽子は寂しそうにポツリとつぶやいた。





お詫び。
手島編。中々更新できなくてすみませんでした。
ようやくラスボス編です。



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