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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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星司の帰国。そして…-5

この日、朝から家を飛び出した陽子は、誰からの連絡にも出ずに、映画を見たり、ショッピングをしたり、気の向くまま1日ぶらぶらと過ごしていた。といっても、頭の中は色んな考えや思いが駈け廻っていた。

いい加減、それにも疲れてボウっと歩いていたが、ふと気付くと悠子の家の前に来ていた。昨日の悠子の弱々しい表情が頭を過った。

「悠子…」

ポツリと親友の名前を口にした陽子は、自分がしなければならないことがあったことに気付いた。

陽子は慌てて呼び鈴を押した。

(遅かったかも…)

それを想像した陽子は、応答を待つのももどかしく、そのまま家の中に入っていった。

「陽子さん!」

対応に出ようとした雄一が、陽子の訪問に驚いた声を上げたが、直ぐに気まずい表情を浮かべた。雄一の表情で、それに間に合ったことがわかり、陽子は安堵を覚えた。

「いいのよ。わかってるから」

「えっ?」

陽子は戸惑う雄一の傍らをすり抜けると、かつて多感な時代に何度も遊びに来ていた悠子の部屋へと足を向けた。高校、そして大学時代の悠子との楽しかった思い出が甦ってきた。

部屋の前に立った陽子が扉をノックしようとした途端、その扉がガチャリと開いて、中から出てきた悠子と鉢合わせた。

「陽子ちゃん!」

陽子に気づく寸前まで喜びに包まれていた悠子の表情が、一瞬にして驚きの表情に変った。その変化に気付いた陽子は、少し意地悪をしたくなった。

「あれえ?手にしてるのってスーツケースじゃない。昨日帰ったばかりなのに、またどこかに出かけるの?」

「ち、違うのよ…」

慌てて否定した悠子に対して、さらに畳みかけた。

「悠子ったら、あたしの顔を見るまでは凄く嬉しそうだったのに、今はどうしてそんな顔してるの?それって親友に向ける顔じゃないよね」

「ご、ごめんなさい…」

謝った悠子の目から涙が溢れてきた。

「何謝ってんのよ。謝るってことは、親友じゃないって認めるのね」

「そんな…」

「もういいわよ。あんたなんて親友でもなんでもないわ。金輪際あんたなんか忘れるんだからね」

「陽子ちゃん…」

「馴れ馴れしく名前を呼ばないでよ。もう見ず知らずの人なんだからね」

「ううっ…」

陽子の言葉に耐えきれずに、悠子は顔を伏せた。そんな悠子の弱々しい姿に納得のできない陽子は、少し攻め方を変えることにした。

「ふう…、悠子にこれくらいは言っても、あんたには怒らせないわよ!」

ため息に続いたこの言葉は、悠子にではなく部屋の中に向かっていた。それに気付いた悠子は目を見開いた。

「よ、陽子ちゃん、知ってたの…」

「聞こえてるんでしょ!バカ星司!」

悠子の問いに答えず、部屋の中に向かって、罵声を浴びせた。

悠子自身、2時間前まで星司の帰国も知らなかった。その星司が突然現れ、各務家と離れた2人だけの暮らしを誘われたのだ。

思いもしなかったことだけに、初めは躊躇した悠子だったが、自分を愛し続けてくれた星司の気持ちと、それを叶えるための準備を整えたことを示されると、もう迷わなかった。ただ、星司が各務家に伝えずに実行するため、陽子にそれを伝えることができないことが、唯一の心残りだったのだ。



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