光の風 〈帰還篇〉-11
「あの女の事は後や！貴未、行くで。」
「ああ、捕まれよ！」
聖が貴未の手を取った瞬間二人は消え、魔物の気配がする場所に向かった。
あの少女が言っていた事は間違いない、あといくつかの場所に魔物を放ったのだろう。数によっては被害が大きくなる。二人はただ倒すだけに集中し、倒しては移動する動作を続けた。
二人が城に戻ったのは夜、かなりの時間が経っていた。
「聖、貴未！」
誰よりも先にカルサが二人に駆け寄った。後ろに紅奈とリュナが続く。
「たっだいま！めーっちゃ疲れちゃったよ。風呂は？飯は？」
おどけて言う貴未に紅奈はいつもならすかさずツッコミを入れるのだが、今回は軽く受け入れた。
「風呂ならわいとる。早行ってき。あんたの場合飯のが重要なんやろ？」
「じゃあ私、二人の食事頼んでくるわね。」
貴未と紅奈のかけあいにほほ笑みながらリュナは女官達の方へ歩きだした。貴未はその吉報にウキウキしながら風呂場に向かう。
「何も心配する事なかったな。ほな、ウチは部屋に戻る事にするわ。」
紅奈はそう言ってすたすたと自室に戻って行った。その場を去っていった三人の姿をそれぞれ見送るカルサと聖。
「相変わらず気ぃきく奴らや。」
「そうだな。」
聖がカルサに話すことがあると気付いた三人は自らこの場を去っていった。二人が話しやすいように自然に去るのはなかなかのものだ。
「で、どうした？」
「結界が壊された。」
聖の直球の答えにカルサは表情を変えた。二人は無言で見つめあう。
「オレらの結界壊すんや、ランクは結構上やろ。水を力として使いよる。」
「そいつが他の魔物を引き込んだのか。何者だ？」
カルサの問いに黙ったまま、聖は首を横に振った。予想どおりの為カルサは素直に結果を受けとめる。
「ただ…。」
聖は言葉をつまらせた。何か気になる、少女の表情が頭の中に蘇った。
「お前の事を知ってる素振りやった。」
「オレを…？」
聖は頷く。カルサは少し考えてみたが、それでも分からなかった。
「女の子や。まだ背も低い…黒い髪の女の子。」
「女…の子。いや、知らないな。」
「魔物かどうかも分からへん。とにかく、明日朝一で結界を張り直しに行くわ。」
カルサは頼むと答え、聖は食事を取るとその場を後にした。その姿をカルサは黙って見届ける。