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可愛い弟子
【ロリ 官能小説】

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重丸の苦悩-5




「ずっと、ああなんだ……。」

案内してきた刑事が、シンドウの耳元で囁いた。
それで、シンドウは合点がいった。
おそらく、一課のデカ共は、この少女の扱いを持て余したのだ。

がさつで無神経揃いの奴らに、繊細な女の子の扱いができるわけがない。
ましてや、赤ん坊を抱いているから、危害を恐れて、女性警察官を擁する少年課に応援を要請したのだろう。

「いったい、何があったんですか?」

この状況は、とてもじゃないが、まともとは言い難い。
車中で、係長から概容の説明は受けていた。

未成年者による、殺人未遂事件。
だが、現場に来なければ、事件の詳細は掴めない。
まさか、目の前にいる、この少女が人を刺したとは思えなかった。
ましてや、赤ん坊がいるなどとは聞いてもいない。

状況を正確に掴まなくては、対処の方法も制限される。
『Safety First』
安全第一主義。
子供達には絶対に怪我をさせない。
これが少年課の大原則だ。

だから、正しい方法で、正しい処置をするためには、ある程度の状況を把握しておく必要がある。
だが、シンドウの質問に、刑事は渋面をつくるだけで、答えを返そうとはしなかった。
まるで、聞こえていないかのように無視までしている。

こんな状況でも縄張り根性かい……。

警察官同士の縄張り意識による軋轢は、もはや末期的状況で救いようがない。
彼らは自分たちが知り得た情報を、絶対に外に出そうとはしない。
捜査の手柄を横取りされるのを何よりも恐れるからだ。

少年課が安全第一主義であるならば、捜査一課などはさしずめ「隠密主義」と言えるだろう。
徹底して知り得た情報を隠匿することが、彼らは使命であるとさえ信じて疑わない。
そして、情報の隠匿は、それがたとえ同じ署内に籍を置く身内に対してであっても変わらないから始末が悪い。

捜査一課は、強行班が7つあるが、情報を隠したあまりに、同じ事件を4つの強行班で捜査したという、笑えない話まであった。

シンドウは、隣の刑事を睨みつけたが、涼しい顔をしているだけで悪びれた様子もなかった。

「おい、帰るぞ。」

一生懸命少女をなだめていた女性警察官に声を掛けた。

「俺たちは、用無しだそうだ。後は、こちらの方々がすべてやってくださるとさ。」

たとえ一課のデカだろうが、こっちだって刑事だ。
コケにされてまでコイツらを助けてやる義理はない。
シンドウが、振り返ろうとしたところで肩を掴まれた。

「そう慌てんなよ……。気の短けえ野郎だな……。しょうがねえな。簡単な、あらましだけなら教えてやるよ。」

そう言った刑事は、軽く溜め息をついた。
向こうから簡単に折れたということは、よほどこの少女を持て余していたのに違いない。

「今から、一時間ほど前だ。この先の部屋で男が刺された。あの娘はその被疑者だ。」

「えっ!?あの子が!!まさか……まだ子供じゃないか!?」

「ああ、確かに子供だな。だが、あの娘はあんな幼い顔をしながら男をメッタ刺しにしやがった。」

「メッタ刺し!?……理由は?」

刑事が大きく息を吐いた。

「理由は、わからん。それはこれからお前らが調べるんだろ……。」

そうか……あの子は未成年者だ。
おそらく12歳以下とコイツらは踏んだのだろう。
あまり広くには知られていないが、たとえ未成年者であっても、刑事事件の場合は、刑事部が担当する。
それは、12歳以下であっても変わらない。
だから、本来ならあの少女は、刑事部である一課で取り調べを受けることになる。
メッタ刺しであるならば、これは立派な殺人未遂事件であり、もしガイシャが死ぬようなことにでもなれば、すぐさま殺人事件に切り替わることになる。
女性警察官も立ち会うが、きつい取り調べになることは間違いない。

だが、例外がある。
未成年者の刑事事件を刑事部が担当するのは、あくまで基本であって、12歳以下の場合は、少年課に回されることが多い。
心身の未発達な少年少女達が、刑事部の取り調べに耐えられないからだ。
少年犯罪が多発するようになり、今では、一般的な警察官でも少年事案に対処できるように指導は強化されている。
しかし、やはり少年犯罪を専門としている少年課の蓄積された技術とノウハウには遠く及ばない。

そして、本町署では、刑事事件であっても12歳以下の場合もしくは年齢不詳の場合は、少年課に担当させるのが慣例となっていた。
だから、あの少女は、少年課で取り調べを受けることになる。

「しかし……どうして、あんな子が……。」

シンドウは、少女を見やりながら、うなるようにつぶやいた。
痛々しいほどに細い手足だった。
まだ、胸なども、ほとんどないかのように思えた。
血で真っ赤に染めているが、その素顔は、きっと可愛らしいに違いないと、その輪郭から容易に想像させた。

「刺されたガイシャの方は?……。」

亡くなれば、この子は殺人者になる。

「虫の息だったが、救急隊員の話じゃ致命傷は避けたようだ。おそらく必死に抵抗したんだろう。手や足には深い傷もあったが、腹には傷がなかった。足を刺されたおかげで逃げそびれたらしく、背中はメッタ刺しにされてたがな……。
だが、どれも致命傷には至らなかったようだ……。」

それを聞いて、シンドウは少しだけ安堵した。
生きているならば、少しは量刑も変わってくる。

少年が刑事事件を起こした場合、鑑別所を経て少年院に送致されるのが通常だが、14歳以下ならば児童自立支援施設に送られる。
そこで、普通の子供達と何ら変わらない生活を送りながら、矯正されるのだが、出所の時期が変わってくる。


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