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可愛い弟子
【ロリ 官能小説】

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忍び寄る影-5



ついさっきまでは、しょげた顔をしていたくせに、重丸の言葉に期待を掛けて、もう瞳を輝かせたりしている。
本当に現金なものだと、苦笑いを浮かべながら、この若い捜査員を見やったりもしたが、彼の剣の筋は、なかなかたいしたもので、重丸がシンドウを可愛がっていたのも、また事実だった。

「君なら、俺の頼みを必ず聞いてくれると思ってね。それだけ、君を信頼してるんだ。」

重丸がそう言ってやると、シンドウの顔に満面の笑みが浮かんだ。

「まかせてください!先生の頼みなら、どんな事でもします!倖田組どころか、阿宗会全部だって見張ってやりますよ!」

たったひとりで、そんなことができるわけがない。
お調子者は、相変わらずだ。
勇んで、よく俺に小手返しを食らっていたよな。

「気持ちは、嬉しいがそこまでしなくて良いよ。倖田組だけを見張ってくれればいい……。」

「はぁ、わかりました。……しかし、なぜ倖田組を見張る必要があるんですか?」

もっともな疑問だ。
真正直に答えてやることはできないが、それらしい答えがないと、彼にも励み甲斐がないだろう。

「実は、私がお世話になった先生が、どうやら、倖田組の奴に脅されているらしいんだ。それほど大したことではないらしいんだが、やはり、お世話になった身としては、少しでも恩返しがしたい。それで、倖田組に不穏な動きや噂を聞いたら、それを俺に教えてもらいたい。」

「その先生を守りたいってことですね?」

「そうだ。」

「相手の名前は、わかっているんですか?」

「ああ、『トリヤマ』という男だ」

「トリヤマ……。よくわかりました。特にそのトリヤマという男に、目を光らせておけば良いんですね?」

「ああ、そうしてもらえると、助かる。」

「まかせてください!必ず先生のお役に立って見せます!」

「頼むよ。」

シンドウは、気持ちの良い青年だった。
それに、正義漢でもある。
あの事件が起きて、真っ先に、ツグミの現場に立ち会ったのは、彼だ。
彼がツグミを確保して、警察署へと連れて行った。
ツグミの取り調べをしたのも、主に彼だった。

「シンドウさんは、元気?」

ツグミは、時々、重丸の前でも、彼のことを口にした。
シンドウの真摯な態度が、ツグミの心にも、わずかではあるが届いていたのかもしれない。
あの娘の心を多少でも開かせるほどに、シンドウには、実直な優しさがある。
重丸の前で、シンドウの名を口にしたのと同じように、ツグミは、奴らの前でもシンドウの名を口にしたかもしれなかった。
だとすれば、奴らはツグミの足取りを追って、シンドウに接触を図るかもしれない。
それは漠然とした感でしかなかったが、少しでも可能性は潰しておきたかった。
シンドウに、真実を告げることはできない。
信頼はしているが、秘密を握る人間は、ひとりでも少ない方が良いからだ。
だが、トリヤマたちの動きは、できる限り把握しておきたい。
奴らを見張るためには、シンドウは最も適したキーマンのひとりだった。
シンドウは、勘も鋭い。
それは、彼の太刀筋によく表れている。
どのような形になるかわからないが、おそらくシンドウは、接触を図られれば、それを重丸に伝えてくるだろう。
彼には、不本意な役目になるかもしれないが、そうなってくれれば、トリヤマたちの動きを子細に掴むことができるようになる。
重丸は、ちょっとした罠を仕掛けてみるつもりだった。

「ところで、先生……」

正義漢の好青年が、不意に自信なさげな顔になった。

「ん?」

「あの、私からも、ひとつお願いがあるんですが……。」

そう言ったシンドウの表情を見て、重丸は、苦笑いを浮かべた。
彼の願うことなどすぐにわかった。
道場の中で、娘に向ける眼差しには、羨望と期待の入り交じったものが、いつだって滲み出していた。

「今度、聞いておいてあげるよ。」

重丸は、シンドウがすべてを言う前に、笑いながら答えを返していた。
これから、この青年には苦労をかけるかもしれない。
そう思えば、愛すべき娘を、わずかの間シンドウに預けたところで、それを憂う気持ちにもならない。
それに、あの娘の身持ちの固いことは、親である自分がよく知っている。
およそ浮いた話を、シノには聞いたことがない。
であるから、まず安心して大丈夫だろう。
後日重丸は、シノとシンドウのデートの段取りをしてやり、当日は、シンドウの車に乗り込んでいくシノを見送ってまでやったのだ……。


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