回天-4
タケルは自分のを掴んだ。
怖いほどに冷めた顔をしていた。
意外な真実を知らされて、正気でいられるはずがなかった。
早くここを自分のものにしてしまいたかった。
それほどの強い焦りがあった。
自分であてがい、挿れようとした。
ミナの顔が歪む。
そのまま、胸を合わせてミナを胸の中に閉じこめる。
小さな頭を腕に抱え込んで、体重を掛けた。
｢うつ……くつ……｣
胸の中から、ミナの苦しがる声が聞こえる。
かまわなかった。
そのまま体重を掛けつづけた。
メリメリと骨の軋む感触が先端にある。
どうしても硬くて、先へ進まない。
入り口すらも突破できない。
先の開きそうな気配はあるが、それ以上は壊してしまいそうで、怖くて押し込めない。
ミナは、痛いとも、やめてとも言わない。
ひたすらしがみついているだけだ。
そのうち、すすり泣くような声が、胸の中から聞こえてきた。
タケルの身体から、不意に力が抜けた。
腕の中のミナを見た。
ミナは声を殺して、泣きじゃくっている。
いつもと同じだ。
「泣くくらいなら、痛いって言えばいいだろ？」
「だって……」
痛いのにずっと我慢していた。
「バカ……」
バカなのは自分だ。
ミナのやわらかい頬を手にとった。
甘えるようにミナが手のひらに頬ずりをする。
その仕草は、許して、といっているようにも思えた。
「お兄ちゃんが怖いか？」
目の前にミナの顔がある。
身体を投げ出すようにしてタケルはミナのとなりに横たわっていた。
ミナは答えなかった。
涙に潤んだ瞳を向けているだけだ。
「お兄ちゃんにキスしな」
腕をひろげると、ミナはすぐにしがみついて、ふっくらとした唇を重ねてきた。
軽い身体を胸の上に乗せた。
薄い背中を広げた手のひらで撫でさすった。
その手は、すぐに下へと伸びて丸い尻を撫でた。
尻の狭間から手を滑り込ませて、無毛の性器に触れる。
「ここは、お兄ちゃんのものだからな」
「ん……」
ミナは甘えるように唇をタケルの頬に寄せて、その唇を何度も頬に滑らせる。
「お兄ちゃんにくれるんだろ？」
「うん……」
ギュッ、としがみついて、それは信じてと訴えているようにも思えた。
タケルはミナの後頭部を鷲掴みにすると、荒々しく唇を貪った。
どんなに乱暴に口を犯してもミナの顔は逃げなかった。
狂おしいほどに胸の上にある細い身体が愛しくてならない。
ミナを犯してみたい気持は十二分にある。
だが、ミナを苦しめたいわけじゃない。
タケルは、この妹を悦ばせたいのだ。
タケルのペニスで喘がせ、しがみつかせたいのだ。
ミナが苦しみ、藻掻きつづけるなら、そんな行為に意味はない。
それからミナを上にしたまま身体の上下を入れ替えて、タケルのペニスを舐めさせた。
ミナは、目の前で怒ったようにそそり立つものを素直に握って、舌を当てた。
はあはあ、と息を荒げながら、顔を何度も上下させて短い舌を這わせつづけた。
やけに熱心な姿は、教え込まれたというよりも、ミナ自身が赦してもらおうとしているように思えた。
まだまだ拙い舐め方ではあったが、それでも震えるほどの気持ちよさはあった。
だが、タケルは逝かなかった。
股間は痛いほどの疼きを訴えているのにタケルは果てようとしなかった。
逝こうと思えば逝くことはできた。
しかし、タケルはそれを由としなかった。
ミナの胎内にすべてを吐き出したかった。
この悔しさも愚かさも、そして愛しすぎるほどの愛しさも、すべてをミナのなかにぶちまけてタケルの想いを完結させる。
だから、それまでは逝くまいと心の裡に固く決めた。
執念とも呼ぶべき、タケルのミナへの想いであった。