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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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兄の帰省-4

「アイツの家庭…ねぇ。」
「御免なさい、本当はこんな話、しても仕方ないんだろうけど。」
「良いよ良いよっ!アンタの事だから考え無しにそんな話はしないでしょうに。」

いつものドーナツ店。ホットコーヒーを一口し、ゆっくりとカップをテーブルに置く。

「まっ、私も蓮も一度はあの悲惨な状況をどうにかしようと色々やったものさ。」
「え?」

一条君の家に佐伯君を居候させる、と考えたそうで。昨日の様子を見た限り彼はとても
幸せそうだった、昔から家族ぐるみの仲…、それを実行しても可笑しくはないけど。

「でも、そう簡単な事じゃ、ないよね。」
「まぁーねぇ、動物を飼うのとはまた違うし、でもそれだけじゃないんだけどね。」
「と、言うと?」
「アイツ、頑固なのよねぇー。」

テーブルに肘を突き、手の平に顎を乗せ窓に視線を向ける。

「手続き…みたいな事さえすりゃ恐らく彼を連の家に居候させる事は可能だろうさ…、
けどアイツ自身「迷惑は掛けたくない」「俺一人でもやってける」って見栄張って。」
「佐伯…君。」

あの彼なら言いそうだ。

「でも、そんなんで生活していける筈がないわ。」

私もスープを一口し、ゆっくりとテーブルに置く。

昨日のあの汚れた家、「帰りたくない…」とぼやいた彼。

「そうよ、妙な意地張るから。」
「でも!彼一人が悪い訳じゃ…。」
「勿論よ、あのバカ親父がっ!」

バカ親父…、後になって知ったが私がだいぶ前お爺ちゃんの仕事についていっている時
路上で酔っ払って倒れていた男性…、それが佐伯君のお父さんだった、だなんて。

「酷い、人だよね…、実の息子をすっぽかして…。」
「えぇ、だから胸倉掴んで怒鳴った事もあったな。」
「巴ちゃんったらまた…。」
「…私じゃないよ。」
「えっだってこんな野蛮な事するの巴ちゃんしか…。」
「心外ね、私は虫も殺さぬとっても心優しい女の子なのに。」
「……。」

一条君に後で報告しよ。

「連だよ、あたるがあのバカ親父が何時まで経っても帰って来なくて酷く落ちこんでる時
そんな彼の苦しみなどいざ知れず、へらへらと酔っ払って帰ってきたアイツを見て蓮が
激怒したみたいで。」
「あの一条君が…。」

穏やかな彼が、でも。

「ふっ、大した友情ですこと…。」

ある日学校でたまたま一条君と二人きりになった時、彼に言われた。

「彼を、あたるを大事に想ってくれて、本当にありがとうっ!」

あの時の彼は本当に心の奥底から感謝していた。何だか私まで嬉しい気持ちになった。

ふと周りを見渡すと仲慎ましい家族連れが通りすがるのを目にし。

「けど、このままじゃアイツ、駄目になりそう。」
「そう、ですよね…。」
「ある時はご近所で軽いトラブルに巻き込まれ、またある時はあのバカ親父が傷害事件を
起こして警察署に走って行って、酷い時は熱したアイロンをそのままにして、親切な近所のオバサンがたまたま近くを通らなかったら今頃火事に…。」

そんな事が…。生活面も大変だけど、何より精神面だって。家に帰りたくない思い、私が
かつて彼のお父さんを助け救急車を呼んだ時も、佐伯君の家で一条君に寄り添ってもらい
つつ、震えながら待っていたそうで。

はぁー、ますますそのオジサンが憎たらしく思える。だけどこんな事が続いたら問題だ。
その内彼の家が全焼しちゃう…、と言うか彼が壊れてしまう。

「せめて、せめて彼のお兄さんが戻ってこれば…。」
「確か、海外でお仕事をなさってるっていう、実の弟を見捨てて。」
「若葉…。」
「あ…。」

私ったらなんて言い草。危うく巴化…するとこだった。

「でもまぁ…仲は良いみたいよ、意外と。」
「え?」
「親があんなんだからさ、割と良く弟の面倒を見ていて、そんな兄に対して彼も父親の
ように慕っていたみたいで。」
「へぇー。」
「海外で仕事してるくらいだから経済力も相当あるね、アイツ家でロクなモン食べてないと思うし…。」
「お兄さん…かぁ。」


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