投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

幸せの連鎖
【家族 その他小説】

幸せの連鎖の最初へ 幸せの連鎖 8 幸せの連鎖 10 幸せの連鎖の最後へ

2-5

床に倒れた私は、朦朧とした頭で西条氏を見上げると、彼は拳をガタガタ震わせながらこちらを見下ろすだけ。


その表情には悔しさと憎しみと、そして悲しみがこもっていて、どれだけ罵られるよりも彼の目尻に溜まった、たった一粒の涙が西条氏の気持ちを表していたような気がした。


亜衣子と駆け落ちをしたことに微塵の後悔もなかったはずなのに、彼の涙に、初めて心臓が鷲掴みにされたような動揺を覚えた。


私のしたことの罪の大きさを。どれだけ亜衣子の家族を不幸にしてしまったのかを。


それは亜衣子も同じだったようで、倒れた私に駆け寄ってくれたものの、いきなり暴挙に出た西条氏を非難することもなく、ただ父親を見つめているだけだった。


「……君は、残された家族の気持ちを考えたことがあるのかね」


絞り出したような西条氏の声は、涙のせいか、微かに震えていた。



「…………」


「亜衣子はたった一人の私の娘だ。大事に大事に育ててきた、大切な娘だ。それを何も言わずに連れ去られ……私達がどんな生活を送ってきたか……」


語尾が弱くなった西条氏は、たまらず右手で両目を押さえていた。


「お父さん……」


ポツ、と頬が濡れた感触。


慌てて亜衣子の方を見ると。


私の横でしゃがみ込んでいた亜衣子は、ハラハラと涙を流していた。


ハッと息を呑む。


彼女はか弱そうな外見とは裏腹に、滅多に泣くことなんてなかった。


そんな亜衣子が見せた涙に、私の胸は更にズキッと痛む。


この時初めて、私は亜衣子も不幸にしていたことに気付いた。


亜衣子は18歳、年頃の女の子だけどまだまだ親に甘えたかったはずだ。


それを、私が彼女と離れたくない一心で奪ってしまった。


私さえいなければ、西条家は家族仲良く暮らしていけたはず。


頬に落ちた亜衣子の涙が、どす黒い闇となって、私を覆い尽くしていく。


私が全て壊したのだ。


私が、一つの家庭の幸せを奪ったのだ。





幸せの連鎖の最初へ 幸せの連鎖 8 幸せの連鎖 10 幸せの連鎖の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前