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あぁ...いやらしぃ 好色OL・絵美
【OL/お姉さん 官能小説】

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訣別の時-1

 浩也の婚約話を聞いて、絵美はしばし呆然としていた。
 それでも友人たちに悟られないよう、平静を保とうと自分言い聞かせていた。何とか相槌を打つことだけは出来たが、生返事だったので、バレやしないかとドキドキものだった。だが、それ以上に浩也の話によるダメージが大きく心はここにあらずであった。

「相手はいいとこのお嬢様らしいよ」
 噂話好きの由紀恵がベラベラと話を続ける。
「あ、それ私も聞きました。相手の方のお父さんの会社が、うちの支店のお得意様なんで、その話があった時は、支店内でも話題になりましたよ」
 裕香が勤務する商工流通団地支店は、地域産業の要である工業団地の近くにあり、大口の得意先が多数所在する。
 浩也の相手の父親が重役を務めるJコーポレーショングループの本社もここにある。
「JコーポレーショングループにJセントラルトレードっていう輸入雑貨を取り扱っているグループ会社があるんですけれども、そこの社長さんなんです」
 相手方の父親の伯父さん(父の兄)がグループの会長を務める同族経営の会社である。
 Jコーポレーションは、元々運送会社から始まり流通関係を中心に規模を大きくしてきた。今では、運輸、流通、販売、不動産などの多岐に渡っての経営形態を展開しており、地域でも有数の大企業として成功を収めている。
 浩也の結婚相手の父親は、グループ本社でも常務取締役として執務を行い、セントラルトレードでも社長として辣腕を振るっている。最近では、自社グループの強みである流通・運輸部門をフルに活かし、ネット通販会社との共同事業で実績を上げている。
 絵美の勤める銀行は、言っても地元の信用金庫である。メガバンクや都市銀行ほど大きな取引金額にはならない。それでも、地元の優良企業であるグループとはしっかりとした関係を構築していきたいというのが上層部の思いだろう。

 一方、浩也の父親は、県内を中心とした旅客運輸会社の事業部長である。付き合い初めの頃、浩也からも聞いていた。
 県内有数の大企業の子息同士が結婚するとなれば、当人同士の意思とは別に親同士、企業同士の思惑が交錯する。特に信用金庫の重役たちはこの婚約を歓迎した。

 政略とするならば、浩也をもっと都会のメガバンクにでも就職させれば更に大きな企業とのつながりを求めた方が賢いのではないか!?
 しかし、そこには浩也の母親のしたたかな思惑が働いていた。
 母親が思い描いたのは、より確実でより実のある息子の結婚であった。確かに上場企業とのコンタクトは魅力的ではあったが、自分の家柄は所詮地方の有力企業に過ぎない。全国、または世界を相手にする企業からすればたいした存在ではない。
 それであれば、地元の大手企業とのパイプをガッチリと組み上げた方が良いと判断したのだ。もちろん息子の幸せを願う気持ちに偽りはなく、政略のためという意識はほとんどない。だが、傍から見れば政略結婚以外の何物でもない。

 最初にこの話を浩也から聞いた時のショックといったら、それはもうこの世の終わりのような衝撃であった。
 珍しく浩也からの誘いがあり、これはもしかして「求婚」かと、今考えると全く逆のメデタイ想像をしていた所に、いきなりの「別れ」の告白。
 もちろん、すべてが浩也の意志ではないが、さすがに自分の勤務先の経営陣を含む地元の大手企業複数社が絡む話だということを理解すると、どうやっても逆転することなど不可能という結論にしか至らなかった。
 どう考えても自分が引く以外に方法は無い。もしここで反発し、しゃしゃり出ていこうものなら、自分の生活(退職、天職などの生活基盤)に大きなダメージを被ることも目に見えている。田舎の政治力を舐めてはいけない。普通の自動車工場の娘には、大手企業を相手にする力なんてこれっぽっちも持ち合わせていない。
 
 「別れ」という結論に達するのにさほど時間はかからなかった。
 そのことを告げると、浩也は今にも泣きそうな顔で「ごめんなさい」と繰り返し謝るだけだった。

 あれから半年、諦めたと思っていながらも、心のどこかで「もしかしたら浩也が親の敷いたレールを蹴って自分の所に戻って来てくれるんじゃないか」という淡い期待を持ち続けていた。浩也自身、自分の主張をまったくといっていいほど持っていなかったけれど、付合い始めてから少しずつ思ったことを口にするようになってきていただけに、万に一つそういった可能性も残っているんじゃないか・・・そう思っていた。
 結局、今となっては、諦めきれていない未練だらけというだけだった。

 そして今日、婚約、結婚の知らせを聞いて、淡い期待は、一瞬にして儚い夢となった。

 友人たちが帰ってから、絵美は病室のベッドの中で泣いた。
 浩也から別れを切り出された日も泣いたけれど、まだ何とかなる、いや、何とかしてみせると前向きになることができた。けれど今回は完全に立ち直れない状態だった。
 様々な思い出が頭の中に浮かんでは消え、消えては浮かぶエンドレス。些細でつまらないようなことからSEXのことまで、浩也との時間を反芻するかの如く頭の中を行ったり来たり。
 SEXのことを思い出すと、知らずと手が下半身に向かっていた。ここが病院だということを忘れ、浩也のぎこちない手技を再現するかのようにビラビラ周辺を擦りあげる。その瞬間、ハッと我に返る。
 ここは病院だ。

 却ってその行為が自分を冷静にさせたのかもしれない。
 いくら思い詰めても浩也が自分の所に来てくれる可能性はほぼ0%。いつまでもグダグダと別れた男を思っていても仕方がない。
 そんな時間があるのならば、新たな恋に向かって走り出した方が自分のためだ。そう思うことにした。
 半年間という時間が切り替えの早さにつながったのかもしれないし、今日出会った沢村慶一郎という男に少なからずトキメイいることも大きな要因になっているのかもしれない。
 


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