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偽りの欲情
【OL/お姉さん 官能小説】

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偽りの欲情-3

「こんな時に誠に不謹慎ですが、大切なお話しなもので・・・」

保険会社の人が来て、補償の事について話だした。
事故から二日たっても私は成り行き上、妻を演じなければならなかったのだ。
もちろん、すぐに家の方に知らせなければと思った。
だけど私は克也の携帯番号しか知らない。
そんな事・・・調べればすぐわかる事じゃない・・・!?
調べたところで、いったい私は何と言って家族に説明すればよかったの?


「一応の形式なのですがご主人の身分証などございましたら・・・」

「身分証?・・・ですか?・・・」

「はい、手続き上の形式なので免許証のコピーなど、ご住所の確認がいただけるもので結構です。」

これは困った。
運転免許証は私の部屋と住所が違うのでバレてしまう。
運転免許は持ってないと言い、健康保険証などと言われてもそんなものが出せるわけない。
本当にいけない事だと思いながらも、一時的に私の住所に移せば住民票だけは取れると思った。
保険の事さえ片づければ、またそっと元の住所に戻しておけばいいんじゃないだろうか?

言っておきたいのは私は決して、そんなお金が欲しいとは本当に思っていない。
とは言っても入院に通院といえば医療費は保険で賄えても、諸経費はバカにならないわけだし、何よりもしばらくは彼を食べさせていかなければならないのだ。
なのに、しがないOLの預貯金はすぐに底を尽きてしまって会社には「たったひとりの兄がこんな状態で」とまたいい加減な事を言って休んでいた。
不倫の男を囲っているなどと身内にお金を借りるわけにもいかないし、これはもう、切実な問題になってしまったのだ。


記憶を失くした彼は私を本当に妻だと信じてるのだろうか?
あなたはいま失業中で仕事を探してる途中だったとも言い聞かせてある。
彼に「旅館で働いていた」などと言おうとしたけど、それは何かとマズいような気がして「失業中」と言ってしまったのだ。
私はただ、駆け付けた救急隊員の手前、体裁にウソをついてしまっただけだったのに・・・
それなのに、その嘘ひとつがどこまで拡がってしまって繕うように次々と言い訳を考えなければならない。
もはやこの先、私にも想像がつかなくなっていた。

先生は特に障害が残るような兆候もないと言った。
ただ、記憶はいつ戻るか分からない。
徐々に思い出すかも知れないし、何かの拍子に思い出すかも知れない。
保険会社の方からするとこんな場合、ある一定の保障額が決められてるという。
その額で同意するならば、すぐにでも手続きできるが・・・という。

記憶喪失とは、それは大した額だった。

「ごめんね。面倒かけちゃって。」

「んっ・・・あなたのせいじゃないわ。」

そんな具合で昼間はほとんど部屋にいた。
女の一人住まいに男が同居してるのを人目に晒したくなかったのと、どこで彼の知人に遭うかも知れない。
通院は仕方ないとして、買い物などは日が暮れてから出かけた。

「結婚して・・・何年だっけ?」

「えっと、四年よ。」

「子供っていなかったんだね。」

「うん・・そうね。あなたお仕事探してたし・・・」


唇が触れ合う距離で話すと彼の手はセーターの裾から乳首の先端を撫でる。
四年というのは単に私がこの部屋に住んだ歳月だった。


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