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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキッ!X 『ミステイクス リンク』-4

「ねえぇ、ところでさあ…… 清美ちゃんは何処へ行ったの、居ないみたいだけど」
 母は突然話題でも変えるように、妹の清美が家に居ないのを気にしだすと、何だか落ち着かない様子で、是奈に尋ねて来た。
「知らないよぉ、あんな馬鹿ん子なんか!」
 是奈は、妹の事が出た途端、ふくれっ面をしてそう言い殴ると。プイッと白ばっくれるようにして、そっぽを向いてしまう。
「あんた達……また、喧嘩したのね」
 そんな是奈の態度を見てか、母は呆れたように顔を顰(しか)めると、本当にあんた達ったら仲が悪いんだから! とでも言いたげである。それでも、お姉ちゃんが妹の面倒を見なくちゃ駄目だろうと。
「あんたちょっと探してきなさいよ!」
 なんて事を、是奈に向かって言い出したりする。
 是奈は軽く腕を広げて。
「大丈夫だよ。どうせまた公園ででも遊んでるって」
 と、余り気にしていない様子だったりする。
「そんな事言っても……もうすぐ暗くなるだろうし。あの子まだ小学生なのよ!」
 小学生って言ったって、もう4年生にもなれば、ご近所の公園で迷子になって泣いている、なんて事もあるまいし と是奈は惚(とぼ)けるが。
「ねえぇ、あの子可愛いから誘拐とかされたらかわいそうでしょ!」
 と、母は心配一入(しんぱいひとしお)の様子であった。
 最近幼い子供が犠牲に成る、悲惨な事件や事故の報道が多いせいか、母の取り越し苦労にも似た気遣いが、是奈とて解らんでもなかったのだが、そこまで言うか! と、是奈は呆れたような顔をするばかりである。
 そんな是奈に向かって母は、噛み付くような勢いでもって言い殴ってくる。
「ねえ、あんたひとっ走りして、迎えに行って来なさいよ!」
 ひとっ走りって…… あたしそんな事してる暇、無いんだけどなぁ…… と、言われた是奈は相変わらず、嫌々である。
「はいはい、つべこべ言わないのっ! さあ行った行ったぁ!!」
 母は強引にも是奈の腕も引っ掴んで玄関先へと彼女を送り出すと、
「後は私が、かたしとくから」と、扉を閉めて是奈を家から締め出した。
 是奈は、なんだかなぁ〜 と思いつつも。
「しかたないなぁ……」
 呟きながらも、夕暮れ時の町並みを横目に、妹の清美を探すべく、近くの公園へと足を運んで行った。


 〜〜〜〜〜〜〜〜


「スイカ!」
「蚊取り線香ぅ」
「う…… う…… うに!」
「忍者!」
「じゃ!? じゃ…… じゃ…… じゃんけん!!」
「”ブー!” お兄ちゃんの負けだよ」
「くっそーぅ! また負けたかっ! ちっきしょう、これで18連敗だぞ!」
 そう言って悔しがる嘉幸(よしゆき)の頭を、撫で撫でしながら、清美はケラケラと笑っていた。
 どうやら嘉幸は、帰宅途中に驚かせて泣かしてしまった清美のご機嫌をとろうと、「お兄ちゃんが遊んであげるよ」とか何とか言い出して、二人で仲良く時間も忘れて『しりとり』に没頭していたようである。
 しかもその、てきとうに始めたはずの『しりとり』で、嘉幸は毎回「ん」を着いて負ける度に、何だか段々エキサイトして来たらしい。
「何故だっ! ガキんちょの頃は『シリトリ王』と異名を馳(は)せたこの俺が、一度も勝てないとは……なんて恐ろしいお嬢ちゃんなんだ!!」
 などとボヤキながら、握り締めた拳をプルプル震わせ口を尖らせていた。
「よーしっ、お嬢ちゃん! もう一回だっ!!」
 こんな調子で、もう何回、リターンマッチを申し出たことやら。どうせまた負けるんだから、止めとけ止めとけ。


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