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やっぱりそこにある愛
【コメディ 恋愛小説】

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カピバラと俺-4

「元気〜〜〜!!」


ドアを開けるや否や、茜の涙声と共に、のしかかる感覚。


「おわっ」


普通の女の子が飛び込んでくるのなら、しっかり支えてあげることが出来るんだろうが、俺にタックルしてきた茜は闘牛のごとく勢いがよかった。


そして、そんな奇襲なんてまるで予想してなかった俺は、当然ながら受け止めることなんて到底出来ず、二人して床にゴロンと倒れ込んでしまった。


「ってえ……」


したたかに床に打ち付けてしまった頭と、胃が潰されそうな重みに、思わず顔をしかめる。


でも文句が言えなかったのは、茜のすすり泣きが聞こえていたからだった。


俺のスウェットを握りしめながら、静かな声でスンスンすすり泣く理由は、言わなくてもわかる。


涙で濡れた頬が視界に入った瞬間、たまらなく胸が苦しくなった。


茜の泣き顔なんて、何度も見たことがある。


小さな頃は、男子に「ブス」とからかわれ泣いていたり、思春期の頃には意中の男から「デブはカンベンなんだ」と振られて泣いていたり、その度に俺の所に来て泣いていた彼女。


だから茜の涙なんて見慣れてて、適当な慰め方だって知っていたつもりどったのに、今日の俺は、なぜか言葉をかけてやることがなかなかできなかった。


茜の恋の終わりを、俺が決めたようなものだったから、だ。


こうするより仕方ないとは言え、茜に本当のことを知らせず、和史くんに上手く別れろと言った罪悪感に押しつぶされそうになる。


本当のことを告げるべきか、否か。


未だ正解がわからない俺は、茜に対して押し黙るしかなかった。


「どうしたんだよ、いきなり」


茜の身体を起こしながら、ゆっくり自分も起き上がり、冷たい床に二人して座りこむ。


茜が泣いている理由をわかっていながら、白々しいと思いつつ。


「和史と……別れた……」


電気も点けていない玄関口では、共用部の蛍光灯の光がわずかに射し込んでいて、茜の顔が青白く見えた。





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